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横浜市西区の株式会社
ビクトリー 古賀光昭  
 

ルミナ・マーケティング ―― 欲望刺激から尊厳支援へ

マーケティングは長らく「欲望を刺激する技術」として発展してきました。消費者の行動を予測し、購買意欲を高めることが中心であり、時に人間を「欲望の対象」として扱う危うさを伴っていました。そして、人を「クリックする機械」として扱い、不安を煽り依存を生み出す手法が拡大してきました。

私はこの流れを根本から変えるために、新しいマーケティング理論を考えました。それが 「ルミナ・マーケティング」です。

「ルミナ」とはラテン語で「光」「輝き」を意味します。人間の尊厳や価値を中心に据え、商品やサービスを通じて人の内なる光を呼び覚まし、その輝きが社会に連鎖することを目的とします。これは従来のマーケティングが扱った顧客の承認欲求ではなく、存在承認を扱うマーケティングです。

 

1.従来のマーケティングとの違い― 「買わせる」から「輝かせる」へ

  • 従来型:欲望を刺激し、他者評価への依存。買わせることが目的。
  • ルミナ型:尊厳を支援し、自己の価値を自律的に実感。人を輝かせることが目的。

従来の承認欲求マーケティングは、他者からの評価で動機づけしていました。ルミナ・マーケティングは、「自分はいていい」という感覚を呼び戻します。従来は「買わせる」ことが目的でしたが、ルミナ・マーケティングは「人を輝かせる」ことを目的とします。

※ここでの尊厳とは、「私はいていい」という揺るぎない感覚」のことを指します。

 

2.成功の尺度― 売上ではなく尊厳の循環

ルミナ・マーケティングにおける成功の尺度は、「顧客が自分の尊厳を実感し、自分らしく社会と関わり始めること」です。
数値としては、短期の売上よりも、
・顧客が再び来た理由
・顧客同士の推奨・共鳴の広がり
・コミュニティ参加の継続率
といった、存在承認の循環指標を重視します。

 

3.ルミナ・マーケティング理論の5つの柱― 尊厳が広がる設計図

なぜ柱が必要なのか。それは尊厳支援の原則を、商品設計・接客・評価指標まで一貫して貫くためです。

ルミナ・マーケティングの第一の柱は、尊厳の原則です。商品やサービスは、人の尊厳を傷つけないことを最低基準としなければなりません。人間を欲望の対象として扱うのではなく、本来の価値を思い出させるものとして設計されるべきです。

第二の柱は、価値の想起です。提供されるものは、人間の内なる光を呼び覚まし、「自分らしく生きていい」という感覚を届けるものでなければなりません。マーケティングは、単なる機能や利便性の訴求ではなく、人間の存在そのものを肯定する体験をつくる営みです。

第三の柱は、共振の場(空間や体験)です。マーケティングは「売る場」ではなく、人間の感性が響き合う場をつくることに意味があります。商品やサービスは媒介であり、その場において人々は自分の感性を響かせ、互いに触発されます。

第四の柱は、共鳴する仲間(そこに集う人々)です。共振の場に集う人々は、単なる顧客ではなく、価値を共有する仲間です。仲間とは互いに尊厳を認め合い、共鳴しながら生きる存在です。マーケティングはその仲間を迎え入れる営みであり、関係性そのものが価値となります。

最後の柱は、輝きの広がりです。商品やサービスを通じて人が輝き、その輝きが社会に静かに広がっていく。それは、「社会に対する静かな流れ」だけでなく、「顧客がサービスを離れた後も、その原理を社会で実践し、他者の尊厳を支える存在となること」という倫理的な成熟をゴールとしています。これは強制的なネットワークではなく、自然な拡散であり、共感の連鎖です。マーケティングはその広がりを支える風であり、社会に静かな流れを生み出すのです。

 

4.ビジネスの場での応用例

  • 教育サービス
    受験対策や資格取得だけでなく、成績ランキングを廃止し「成長の物語」を可視化する。講師は指導者ではなく「伴走者」として紹介する。成功談だけではなく、「回復ストーリー」も共有
  • ヘルスケア・ウェルネス
    健康を「数値管理」するだけではなく、「感情ログ」も同時に記録。ノルマではなく、「自己祝福の習慣を育てる」。仲間と励まし合う場を設計。
  • ファッション・ライフスタイル
    店頭に「自分らしさの言葉カード」を置く。試着時に店員がほめるのではなく質問する(例:どんな時にその自分でいたいですか?)。
  • テクノロジー・サービス
    KPIを「利用時間」ではなくユーザーがサービスを使った後に「気持ちが落ち着いた」「自分らしさを取り戻せた」と感じるまでの時間を測る。このKPIは、単なるビジネス指標ではなく、人間の尊厳を守る仕組みが働いているかを測る指標である。学習アプリでは「あなたの投稿が誰かの学びを助けました」と通知する。コミュニティガイドラインを、互いの尊厳を守ることを約束しますのように契約化。
  • 小売・接客(めがね店の体験)

数年前、私はめがね店で自分に合うフレームを探していました。店員さんは「誠実に見えますよ」「優しく見えますよ」と外側からの評価を基準に説明してくれました。しかし、私が本当に求めていたのは「似合う」ではなく「自分らしい」めがねでした。

自分ではどんな雰囲気を出しているか分からない。だからこそ、店員さんには「あなたらしさが感じられるのはこのフレームですね」と、私自身がまだ気づいていない内なる価値を言葉にしてほしかったのです。

この体験は、ルミナ・マーケティングの本質をよく表しています。従来の販売は「外的評価」を基準に商品を勧めますが、ルミナ・マーケティングは「内的発見」を支援します。商品は単なる物ではなく、顧客が自分らしさを発見する媒介となるのです。販売員は「商品を売る人」ではなく「顧客の存在を映す鏡」として機能します。

 

5.結び

ルミナ・マーケティングは、「人を輝かせる哲学」です。

顧客の尊厳を守り、存在の光を共鳴させる、これが、欲望刺激型マーケティングを終わらせ、尊厳が循環する経済につながります。

顧客を操作するマーケティングから、顧客を輝かせるマーケティングへ。

ルミナ・マーケティングは、単なる手法ではなく文明の成熟を支える営みです。未来のビジネスは、人間の尊厳を中心に据えることでこそ成熟していくのだと思います。

あなたのビジネスは、顧客を輝かせていますか?