売上を3年で倍増する方法 |
年商が5千万円から2億円くらいの会社の経営者向けの内容になります。
経営者の皆様は、3年で売上を倍増、つまり2倍にすると聞いて、どのような感覚を持たれたでしょうか。
現在一定の売上があり、すなわち、お客様がある程度いらっしゃって、年間5千万円~1億円近くの売上がある企業なら、3年で売上が倍増するのは可能です。
なぜなら、「個人で仕事をする会社から、組織で大きな仕事をなしていく」方向へ、会社を変化させていけばいいからです。
現在何千万円か、1億円に満たない年商の会社でしたら、社長お一人の力ですべてのことをこなしておられるのではないでしょうか。
すなわち、社長の個人技、個人の能力の範囲で会社を回している状態です。
これは、年商が2億円でも同じような状態でして、社長プラス職人のような社員が2~3名いて、その下に単純な作業をする人が10名弱いる、いわゆる「個人技」で事業を行っている会社が当てはまります。
ただし、個人の能力を3年で2倍にするのは無理があります。
ですので、普通に考えたら”個人技”の会社が3年で売上2倍になることはありません。
そこで考えなければいけないのは、個人技で仕事をしていたのを、「組織で仕事をする」ということです。
それも人数の足し算のような組織ではなく、掛け算としての仕事ができるように組織(事業構造)を変化させることです。
今までのやり方をかえる勇気が必要になります。
スターバックスCEOで3社でV字回復、最高売上を達成した岩田松雄さんが結果を出した要因として間違いのないことは「大胆な目標(ビーハグ。『ビジョナリーカンパニー』に出てくる言葉です)を掲げたことです」と述べられています。
スターバックスCEOだった私が伝えたいこれからの経営に必要な41のこと (2013/12/27) 岩田 松雄 商品詳細を見る |
縮み志向で行くと社内全体が縮み志向になります。経営者が成長を描いたら、社内のムードも成長に変わるのです。
世の中が厳しい状況だから、あえて誰もが反対するような発想をしてみるのです。
世の中が暗くなってきたら、あえて経営者が夢を語るのです。
不景気になると、経営者だけでなく、従業員もメンタルな戦いになります。
そのメンタルな戦い、未来の戦いに対し、従業員を鼓舞し自分を奮い立たせるためにも、あえて大きな目標、大胆な目標を掲げてみるのです。
創業者の社長様には少ないタイプだと思いますが、秀才タイプの経営では、今後の経営は難しいでしょう。
秀才タイプの経営というのは、過去の分析はできるけれども、「未知の分野」や「予測のつかない未来」で戦えないことを指します。
今後の経営では未来への答えを出さなければいけません。
また、大胆な目標を設定しますと、今までのやり方をゼロから見直す必要が出てきます。
これが事業構造の大きな変革(イノベーション)になって、今後の事業経営を乗り切る財産が出来ます。厳しい市場環境を乗り越える体質を作ることになるのです。
経営者も成長しますし、従業員も同じく成長します。
高い目標を目指して努力する中に、経営者や社員の人間的な向上もあるでしょうし、精神的な強さも育まれていくのではないでしょうか。
人として生を受け、小さな目標で一生を終えたことを後悔するよりも、大きな目標に挑戦した経験をもって、人間性や精神性を高めたことを誇れる人生もあると私は思います。
どこまで目標にしたことができるかは分かりません。
しかしながら、目標に向かって努力し、道を切り開いていこうとしている経営者に、従業員はついていくのだと思います。
さて、最初に述べましたように「売上を倍増する、2倍にする」大事なポイントは、社長の個人技から、組織で仕事をするように変革することです。
組織で仕事をするとは、仕組みを作って、それにそって仕事をすることになります。
仕組みを作るというのは、誰もができるような仕組みを作ることを意味します。
社長はたいてスーパーマンです。
企業でサラリーマンをやっていたら、営業成績がナンバーワンという方がほとんどでしょう。
するとどうなるかというと、社員の仕事ぶりが物足りなくなります。
「なんで、こんなこともできないの?」という風に社員を見がちになります。
「俺なら簡単に仕事が取れてきた。おまえはなぜできないんだ」みたいになるんですね。
そう、社長は普通の人より成果が出せる人なんです。だから社長になっているんです。
そうでなければ、とっくに会社は潰れているはずです。そもそもビジネスが成り立っていないでしょう。
おそらく能力だけが社員に優っているのではなく、仕事に対する熱意や時間のかけ方も半端ないと思います。
土日もなし、徹夜も平気でやっていたという社長が多いでしょう。
これはサラリーマンの方には失礼に聞こえるかもしれませんが、社長は能力や熱意が自分より半分や三分の一の人々を束ねて結果を出さなければいけないのです。
だから、社長は社員に対して「こいつらは使えない」と思わないでください。
社長より社員が能力も熱意も上だったら、その社員が社長をすれば良いのです。あるいは、独立すればいいのです。
社員が成果を出せないのは、社員のせいではありません。
社員が自分たちできるように仕組みを作っていない社長の責任です。 あるいは、教育をしていない社長の責任です。
社長が全部を自分の責任だと思えるかどうかがカギを握っています。
では、どのような仕組みを作ればいいのでしょうか。
一つは業務を分業することです。
分業というと、プロ野球のピッチャーを思い出してください。
昔の野球は先発完投型がほとんどでした。しかしながら、近大野球では先発、中継ぎ、セットアッパー、抑えと分業制が取られています。
仮に家を販売するとして、自社の宣伝をネット、チラシ等で行うなら、社長が中心となって外部委託するなり、自社の宣伝部門(マーケティング部門等)が行います。
住宅展示場に来た人に営業するとしたら、住宅展示場に来てもらうまでは会社が責任を持つということですね。
それも社長が集客のアイディアの中心になってください。
どういった宣伝の仕方をするか、チラシを作るなら、どういったキャッチコピーを作るかを社長が方向性を指示してください。
何かポイントがあるはずです。ある意味、社長の魂のような商品に魅かれる”何か”があるはずです。
それを核にして、販売戦略を策定してください。
また見込み客づくりも会社の仕事とすればいいです。
営業マンがつらいのは、知識がたいしてないのに「どこでもいいから、とにかくお客を取って来い」と言われることだと思います。
どこに行けばよいかも分からない、何を言えばよいか分からないのが一番困るでしょう。
ですから、「この人に会ってきて」と具体的に訪問先リストを提示できるように会社が準備をすることです。
ところで、もしチラシを使うなら、一度にたくさんのチラシを作るのではなく、地域をできるだけ絞って毎週打ってみるといいでしょう。
チラシは頻度が大事なので、最初は毎週打つのがいいですね。
そしてしばらくお客様の反応を見て、チラシの内容を変えます。
何度か同じ地域に異なるチラシを配布して、効果を検証してください。
チラシには王道のような方法論がたくさんあります。
これを繰り返して、より良いものを創りだすことです。
良いチラシが出来ても、必ず効果を検証しましょう。そして改善することを面倒くさがらないことです。
いずれにせよ、集客は社長が中心になって指揮命令し、組織で行ってください。
それゆえ、会社経営で最も大切で、しんどい販売に社長が力を注がなければならないのです。
次に、お客様訪問について述べたいと思います。
訪問先(既存のお客様のケース)に行くのは社長又は営業マンになります。
社長のお客様訪問については、このホームページの下記に書いてある「どうすれば売上が伸びるか?」にありますので詳細は省かせてください。
お客様が法人の場合だとして簡単に説明します。
まず得意先をS、A、B、Cのようにランク付けします。
ランク付けの参考になるのは得意先別ABC分析表です。
得意先別ABC分析表から売上高は分かりますが、社長から見た得意先の将来性などを加味した上で得意先を全てランク付けしてください。
そしてランクごとに月間の訪問回数の基準を設定します。
例えばSランクは週に1回、Aランクは2週に1回など、訪問回数の基準を決め、月のカレンダーに「誰が、いつ、どこに」訪問予定があるのかを明確にするのです。
この訪問予定の実際がどうなったかも同じカレンダーに記載していきます。これで予定と実績がすぐにわかるようになります。
これは担当者を連れて行くのではありません。よく社長がお客様のところへ行くとなると大名行列のように担当者から営業役員まで、何人も引き連れていくことがありますが、あれは良くありません。
必ず一人でアポを取らずに行ってください。
これは売込みではありません。
そして、お客様に日頃のお礼を述べたら、自社に対するご要望や不満をお聞きします。競合企業の動向もお聞きしてください。 最初は警戒してお客様も本音を言ってくれないかもしれませんが、訪問頻度が上がれば色々な本音を語ってくれるはずです。
営業マンも基本は同じです。
そして、お客様から「買うまでは、買ってください、買ってくださいとしつこく来ていたのに、こちらが買ったあとは一度も顔を出さない。」と信頼を失ってしまうのです。
お客様訪問はお客様の確保です。
定期的に訪問し、お客様の要望や不満をお聞きしてください。また競合会社の動きも見るようにします。
クレームは全てに優先して処理するようにしてください。
売上ノルマや歩合制を取ると、売上を上げることだけを営業マンは考えるようになって、お客様の苦情を放っておくようになりがちです。
だから売上ノルマや歩合制は採用しないようにしましょう。
お客様の要求は全ての事情を無視して応えていくのが会社の正しい姿勢です。
その姿勢に反するような行動につながる制度は作らないことです。
8.一番大切な経営理念と社長の方針
ここで大切になってくるのが社長の方針と経営理念です。
社長が見ていない時の営業マンの行動を左右するのは、「社長の方針」です。
「社長の方針」とは、例えば「お客様の要望には全て応えること」や「クレーム処理は最優先すること」、あるいは「粗利益率30%を守ること」などのように、社長が経営の中で絶対に実行したいことです。
それは、商品に関する方針もありますし、得意先に関する方針もあります。また、人事に関する方針もあれば、販売に関する方針もあります。
会社経営に関して、社長が「こうしたい」と思う考えを、社長の方針として明文化してください。 これは社長の考えだけを書けばいいです。
最終責任者として「我社はこうする」ということだけを文章に書いてください。
そこで大事になるのが経営理念です。
「社長の方針」の元になるのは経営理念です。
我社の使命は何なのか、何のために存在しているのか、どの方向へ向かおうとしているのかを明らかにするのが経営理念になります。
これは、社長が心の底から思っていることを明文化しなければなりません。
しかしながら、経営理念は、簡単に明文化できるものではないのですよね。
最初は他の会社の経営理念を参考にしながら、真似から入るのがいいでしょう。そして、社長の心境が上がって来るにつれて何度も修正し完成してくるものだと思います。
本物の経営理念ができたときは、社長本人は分かります。 真実の経営理念が出来れば涙が出ます。 心に浮かんだ経営理念のイメージが出たときにも涙が出ますし、それを文字にして読んだら再び涙が出るはずです。
なぜそうなるかというと、社長の生まれ持った使命にカチーンと当たるからなのですね。
あえて言葉にして説明すると「ああ、私はこのために生まれてきたのだ」という感覚が、何ともいえないようにして得られるのです。
別に「このために生まれてきた」と思わなくても、何も意識をしていないのに涙がスーッと流れてくると思います。
「え?! 何で、俺は泣いているんだろう?」というのが一番近いかもしれません。
本当の経営理念に気づけて、それを言葉で書いたときには、それぐらいの感動があります。
ただ、涙が出ないからといって、今掲げている経営理念を全くダメなものだと考えないでください。
今の心境で最善の理念というのはあります。 完璧な理念が出来るまでは、経営理念を明文化しないというのもいけません。
今の社長の心境で、考えうる限りの最高の経営理念を掲げてください。
そのうち、徐々に「何か違うなぁ」というのが分かってきますので、その時に修正すればよいのです。
後でもう一度説明しますが、社員研修の時間を取って、社長の言葉で理念と方針について話してください。なぜこうした理念になったのかを、社長の思いで伝えてくださいね。
方針については、得意先の方針や販売方針など多岐にわたりますけど、誰かに任せるのではなく、社長が自らの言葉と熱意で社員に伝えるのが大切です。
これはお客様のところにいったときに、お客様に商品説明をしたり、見積もりをしたりするときの虎の巻なのですが、このアプローチ・ブックの最初のページに経営理念を書いておきます。 方針をアプローチ・ブックに入れるのは止めておいてください。
アプローチ・ブックの最初に経営理念を書いておいて、新規のお客様にはその理念を見せるようにします。
ただ単にモノやサービスを売っているのではなくて、確たる使命感を持って仕事をしていることを伝えるのです。
経営に真摯さがあって、社会に貢献する内容であれば、お客様の共感を得ることもできるでしょう。
自社の商売がしっかりとした理念を元になされていることをお客様に知ってもらってください。
印刷した同じものを全員が持つよりは、営業マン一人一人が手書きで策定したほうがいいものができます。
内容の整合性は守るようにして、表現(説明の仕方、文字や色)は営業マンの感性を活かすのです。
商品説明や見積もり方法に関しては、幹部社員から教えることでもよいと思います。
ただ、社長が持っている独特のポイントになるようなことは、社長から幹部社員に必ず伝えておいてください。社長の頭の中にある大事なコツのようなものです。
それを幹部社員に教えた上で、研修するようにしてくださいね。
社員教育を外部研修に任せている会社も多いかと思います。
されど中小企業の場合は、社長自らが経営理念や方針について教育をしてください。
マナーやコミュニケーションのような一般的な教育は外部でもいいでしょう。
そして研修は成り行きに任せたものではなく、プログラムを作り、研修後の着地点を明確にしておきましょう。
1週間後、1か月後、3か月後、6か月後などの着地点(目標)を明確にして、それに向かってのプログラムを策定しましょう。
私も経験がありますが、中小企業によくあるのは、研修期間に「人につける」ケースです。
「先輩社員の誰々について(同行して)勉強しろ」みたいなパターンです。
そうではなく、社長が主導して、しっかりとしたプログラムを策定し共通の知識を得られるように工夫してください。
営業マン研修で最も大切はことは「お客様に可愛がられること」だと教えてあげることです。
そのためには基本的なマナー、清潔感は必要ですし、お客様と議論しないだとか、お客様の手落ちを責めてはいけないだとか、約束は必ず守るだとかです。
それから、これは社長が教えなくてもいいですが、社内外でやり取りしている言葉が分からないということがあります。
業界特有の言葉は外から入ってきた人には分かりません。
専門用語や会社内の独特の言い回しもあるでしょう。
それら分からない言葉を書面にて教えてあげるだけでも大分違います。
とにかく社長から見て、社員を戦力化するために必要なことを文字にして教育をしてください。
社長の頭の中にある知識経験を言葉として文字として教えることがポイントです。
10.経営計画書にまとめること
ここで一番大切なことは、経営理念や社長の方針、事業計画を「経営計画書」としてまとめることです。
例えば、経営理念や方針の一部を読み上げるというようにです。
事業計画は5か年の利益計画を立てるといいです。
3年だったら、ある程度イメージができる範囲だと思います。
それゆえ3か年の利益計画(表の並びは損益計算書のようなものと思ってください)、人員計画、設備投資計画、商品別販売計画、得意先別販売計画、部門別販売計画などを策定する必要があります。
どうしても作るのが難しいと言うことであれば、まず1年間の利益計画を立ててみてください。
計画に達しないからといって、計画を下方修正しては意味がないのです。
利益計画は社長が立てた「会社が存続するための目標」です。
下方修正をするのではなく、計画を達成するにはどうすればよいか、何をすればよいかを考える前向きな材料にしてください。
計画の未達分を何で補うかを考えることが大事なんですね。
経営計画書は社長の魂が文章化されたようなものです。魂を込めて策定いただけたらと思います。
社長は優秀な人材を採用したいと考えておられることが多いと思います。
ただ私は、優秀な人を採用するより、社長の経営理念に共感、共鳴してくれる真面目な人を採用した方がずっといいと思います。
それに優秀な人だと独立を考えるでしょう。
一番大事な人に関することを、他人任せにしてはいけません。
面接に来た人は、口では理念を否定はしないでしょうから、反応を見て、本音をきちんと読み取ってくださいね。
長くなりましたから、ポイントをまとめておきます。
結論を一言でまとめると、「経営理念を中心にし、個人技から組織で仕事をする会社に替える」ということになりますかね。
何か参考になりましたら幸いです。
方法はいたってシンプルです。
しかし、その説明の前に「失敗している会社」の実例をお話ししましょう。悪い例も参考になります。
社員は35名、売上は単体で数十億円、連結(グループ全体で海外を含め12社ほどあったと思います)で100億円に少し届かないくらいでした。
連結決算で子会社を上手に使って黒字を出していましたが、単体ではここ何年も赤字という会社でした。
この会社の売上を伸ばして黒字にして欲しいというのが社長から私への依頼でした。
まず会社に入って驚いたのは受付、会議室、応接室の豪華さです。ちょっとしたカフェのようなコジャレた作りになっていました。
ところが、事務室は環境整備がされていないくて、とても汚く、陰気な雰囲気でした。
社長室や会議室、受付は収益を生み出しません。それらに会社の貴重な資金を投入している時点で「儲からない会社」だということが分かります。
また、環境整備が行き届いていない会社は、社員の規律も悪く、人事関連の問題が絶えない会社が多いのです。
そして私は社長に「一週間のスケジュール」をお聞きしました。
すると、「結構、忙しいんですよ。」と言って、スケジュールを見せてくれたのですが、会う予定の人は全て社内の幹部、子会社の社長との打ち合わせばかりでした。
社内の部署長や子会社の幹部に、社長室へ来てもらう曜日を決めて、そこで指示や指導をしているのですね。それを例外なく毎週繰り返していました。
実は、会議室で待っているとき、案内してくれた秘書に私は聞いていたのです。「社長はいつも出かけて、忙しいですよね?」と。
ところが秘書は「ええ、忙しいとは思います。社長はいつも社内にいて、一日中、打ち合わせをしていますから。」と答えていたのです。
皆様は、この社長の何がいけないのかお分かりでしょうか?
どうすれば売上が伸びるのか? その2 |
私は社長に「お客様訪問をされていないのですか?」と尋ねました。
すると、社長は「社内での指示や打ち合わせをやらないと会社が回らないんですよ。」との答えでした。
私は「社長、社内をいくら管理したって、収益は上がらないんですよ。収益は会社の中には無いんです。お客様の要求を満たすところに収益はあります。」
ところが社長は「営業はウチのエースである営業部長と次長がやっている。彼らに任せているのだから口を挟むわけにいかない」とのこと。
私は「社長に“営業に行け”ということを言っているのではないんですよ。お客様のところに表敬訪問をしていただきたいんです。会社にいてもお客様の要望は決して分からないですよ。」と何度か説得しましたが、平行線でしたのでコンサルを引き受けるのを辞退しました。
この例にありますように、赤字会社の特徴のほとんどは、「社長がお客様訪問をしていない」会社です。
私もサラリーマン時代を含め、コンサルティングを受けていただいた会社などをたくさん見てきましたが、社長がお客様訪問をしている会社はほとんどありません。
ほとんどの社長が社長室と会議室の往復だけをしていました。
しかし、私の顧問先の社長様は皆さん「お客様訪問」を実践されて、売上及び利益を大幅に伸ばしておられます。
では、なぜお客様のところへ行かなければいけないかを説明しましょう。
事業経営というものは、「お客様の要求に、とことん応える」ことによって収益がもたらされるものです。
それは例え“面倒なサービス”であっても、お客様の要望、要求であったら徹底して応えていくところに、企業の生きる道があるのです。
逆の言い方をすれば、小企業は、中堅・大手がやりたがらない面倒なサービスを誠心誠意行うことによって、お客様の感動を得ることができるということです。
しかしながら、お客様の要求は変化していきます。
時代の変化もあれば、価値観も変わります。
そうしたお客様の要求の変化に応じて、サービスも変えていかなければならないのです。
その正しい判断をするには社内にいてはできません。
社長がお客様に直接会って、見て、話して、感じたものによって、我社(商品やサービスを含んでいます)を変化させていくのが事業経営なのです。
この仕事は会社で最重要の仕事です。
だから、社長自らがやらなければならないのです。
どうすれば売上が伸びるのか? その3 |
それゆえにちょっと普通の定期訪問と方法が違います。
まず、アポイントは取らないでください。 表敬訪問として日頃のお礼を述べ、次のことだけを聞けばいいです。
当社の至らない所、ご不満などはございますか?
何かお困りのことはございますか?
この二点でOKです。
平素のお礼以外は、お客様からの要望、苦情、不満を聞くのに徹して、こちら側の要望は言わないようにしてください。
そして、訪問は一人で行くようにしてください。
社長が一人で行くから、お客様も本音を話してくれるのです。
また、訪問時間は10分以内を目処にしてください。長居をすると次に行くと嫌がられます。 短い時間で面会して、その分、訪問回数を増やすことを考えるといいです。
最初は社長の訪問に対し、怪訝な反応をしめすでしょうが、回数を重ねていくにつれて、信頼関係が増してくるでしょう。
色々とお叱りも受けるでしょうが、それを社内変革の材料にしてください。
そして、大事なことも話してくださると思います。
実例ですが、私の顧問先A社の社長がお客様訪問をされた時に、ライバル企業の動向が耳に入りました。
かなり規模の大きい競合企業が、A社の価格よりも安い価格で営業をかけてきているということです。
社長から電話で相談を受けた私は次のようにお話をしました。
私 「その会社の会社名は分かりますか?」
社長「分かります。教えてもらいました。◯◯社です。」
私 「ありがとうございます。ネットですけど、調べるだけ調べてみます。」
社長「値段を下げたほうがいいでしょうか?」
私 「いいえ、それは止めてください。値段は一度下げると、なかなか上げられません。とにかく、今はまだ決めなくていいです。お客様にも(値段のことは)何も言わないでください」
それからネットで競合企業を調べました。ホームページで場所、拠点数、従業員数などからだけでも、結構推測できるものがあります。
私は競合企業は固定費がかなりかかっていて、提示してきた価格では赤字になると見ました。 今は競合がその価格で攻めてきても長く続くことはないと判断しました。
その言葉のとおり、A社は価格もシェアも落とすことなく発展をされています。
こうした競合の重要な情報も得られるのがお客様訪問なのです。
また、お客様訪問で「困っておられること」をお聞きすると、それがビジネスチャンスになる可能性があります。
「こういうのに困っている」や、「これをできないか」と言われることもあるでしょう。
その問題を解決してあげて、他のお客様にもニーズがあるなら、ビジネスになる機会になります。
お客様の要求を正しく知るためには、社長がお客様のところへ出向いていって、教わってこなければならないのです。
そうしてお聞きした内容に応じて、事業経営を変化させていくことが大切なのです。
経済的な成果はお客様からしか得られません。
市場の答えもお客様からしか得られないのです。