神奈川県横浜市の経営コンサルタント 古賀光昭

 

環境整備とは

 
 
ここでは、環境整備について説明します。環境整備は、一倉定さんが提唱して有名なものですが、最近では一倉定さんの影響を受けた株式会社武蔵野の小山昇さんが環境整備の大切さを推奨していますね。

環境整備は、一倉定さんの説明では「規律、清潔、整頓、衛生、安全」の5つとなっていますが、これに「礼儀」も加えるといいでしょう。 

環境整備とは、「仕事をしやすい環境を整えて備える」というものです。言葉を替えると、「形を整えて、心を整える」となります。ここからは一倉定さんの考え方ではなく、古賀が追加した古賀オリジナルだと思って読んでください。

人は見るもの、聞くもの、行動所作に影響を受けます。 

汚いものをずっと見ていますと、それが当たり前になってきて、心のレベルが汚いものと同じレベルになってくるのです。音も影響を受けます。食器がガチャガチャと音を立てていて、気持ちがいいでしょうか?嫌ですよね。でも、ガチャガチャするのが当たり前の人だと気にならなくなります。心がガチャガチャに合ってしまっているのです。

それから行動所作です。ものを丁寧に扱うには、心に丁寧な心が必要です。姿勢を正しくして歩こうとしたら、心を正さないと綺麗な姿勢で歩けません。きりっとしていたら、気持ちもきりっとしますし、行動をダラダラしていたら、気持ちもダラダラします。 

このように人は見るもの、聞くもの、行動所作に影響を受け、それらと同じような心、同じレベルの精神状態になってしまうのです。 

それゆえに、職場環境で「見るもの、聞くもの、行動所作」を整え、高めていくことによって、社員の精神面の向上を図るのが環境整備なのです。 

 
 

環境整備では何をするのか?

 
環境整備では、6つの項目があります。 

一つは、礼儀です。これは、清潔な服装で身だしなみを整えることです。環境整備は形から整えることを基本としますから、服装から整えましょう。制服や作業着があるなら、常に清潔にして、ボタンを留めて正しく着てください。

意外とそのままになっているのが、帽子ですね。帽子が汚れたままのものをかぶっている人が多いので、洗濯をきちんとした方が良いです。スーツを着用する会社なら、ワイシャツを清潔にして、他の人に不快感を与えないような服装をこことがけることですね。 


そして、礼儀の中心になるのは、「あいさつ」です。あいさつは、御客様へのあいさつと、社内のあいさつの二つがあります。サラリーマン時代の経験ですが、きちんとあいさつができる人は、少ないですね。廊下などで、すれ違うときに会釈をしてはっきりとした声で「お疲れ様です。」と言える人は少なかったですよね。相手の人が爽やかな気持ちになるようなあいさつができると良いですよね! 


次は、規律です。規律とは、約束を守ること、決められたルールを守ることです。あるいは、上司に指示されたことを実行することも当てはまります。 



三つ目は、清潔です。まぁ、これが環境整備の肝でしょう。

床は、ゴミ一つないようにピカピカに清掃します。綺麗さの目標は、寝転がっても服が汚れないレベルです(笑)。トイレでしたら、床でも便器でも、素手で誰が触っても平気なレベルです。窓ガラスは、文字通り素通しです。 

そして、清掃ができていない会社の特徴として、掃除道具が汚れているか、古いものを使っているケースが多いです。清掃用具を買うことを惜しまず、古くなったら新しいものに買い替えてくださいね。 


次は、整頓です。整頓は、いらないものを捨てることと、モノの置き場所を決めて、表示することがポイントです。机や椅子の頭揃え、直線を守ります。モノを置くときにもズレないようにして、きちんとそろえることを心がけてください。


 

環境整備の二つの視点

 
 
環境整備の説明として、礼儀・規律・清潔・整頓までお話をしました。

残りは、衛生及び安全です。衛生及び安全は、先の4つが守られれば、自然とできますので、あまり強調する必要はありません。 

ただし、食品を扱う会社ですと、衛生に気をつけなければなりませんし、メーカーでしたら安全にも気を配らなければなりません。そのあたりは臨機応変にしていただければよろしいかと思います。基本は、礼儀・規律・清潔・整頓をきちんと実施することによって、衛生・安全が自然にできるようになることです。 

さて、個々の説明に入ります。衛生とは、健康を守ることです。環境整備においては、不衛生な箇所を無くすことだと考えてください。手洗い、うがいの慣行や、喫煙に関しての分煙などにも注意しましょう。 


安全は、危険な行動をしないこと、危険な箇所を無くすことです。安全靴やヘルメットの着用が決められていたら、きちんと着用することが大切です。また、頭を打つような何か出っ張りがあるようでしたら、カバーをして「危険!」と表示して、注意を喚起してください。 

車を使用する会社でしたら、道路交通法を守ることは当然ですが、車を発進するときや、駐車するときに急な動きをしないで、安全を確かめて動かすようにすると良いでしょう。スマホを見ながらの運転は厳禁ですね。 


以上、環境整備について述べてきました。最後に環境整備の視点について説明をします。特に小売店や飲食店向けの話になります。 


環境整備は、二つの視点があります。一つは御客様の視点。もう一つは従業員の視点です。 

御客様の視点とは、「明日もこのお店に来たいと思ってもらえるようなお店になっているかどうか」という視点です。

すなわち、御客様から見て、気持ちよいお店(環境)を提供できているかどうかを考えるということですね。これができていると思えるように環境整備を進めてください。 



もう一つの視点は、従業員の視点です。

これは、従業員が成果を上げられる環境になっているかどうかという視点です。従業員が成果を上がられる環境とは、「御客様に喜んでいただけるような仕事ができる環境」という意味です。

従業員が気持ちよく働けるだけではなく、御客様が喜んでいただけるサービスが提供できるような環境になっているかどうかを見なければなりません。 


環境整備を行うときには、こうした視点を考えながら、進めて行くことが大切です。 
 
 

店舗には社長の心が表れる

 
先日、あるイタリアレストランで食事をしました。料理の味は、美味しくて良かったです。

ところが残念ながら、そのお店は環境整備ができていませんでした。
 
まず、椅子に座ろうとしましたら、食べかすと水が椅子に落ちていました。

さすがに座れなかったので、お店に人に拭いてもらい席に着きました。
 
次に気になったのはメニューでした。メニューの中身ではなく、メニューを入れているカバーが、くたびれて傷んでいたのです。
 
そのお店は美味しい料理とこじゃれた雰囲気を売りにしていると思うのですが、メニューが痛んでいて、店の雰囲気とアンバランスでした。

また、グラスを逆さにして吊るす演出をしていましたけれども、そのグラスにホコリが溜まっていました。

私は飲食店の環境整備のコンサルティングをすることもあるので、結構気になってしまうのですね(笑)。

別の日に、和菓子屋さんへ行きました。そこでは買った和菓子を店内で食べられるようにテーブルとイスが置いてあります。

そこに座ってきんつばを食べていたのですけど、その和菓子屋さんの店員さんはお客様が少ない時に、ガラスケースを拭いていました。おそらく社長の方針でお客様が少ない時にガラスケースをピカピカに磨くようになっているのでしょう。

よく見ると、床も綺麗に掃除されていました。

 私は店員さんに「環境整備をよくされていますね。社長の方針ですか?」と聞きますと、店員さんは「はい。」と返事されていました。

 店舗は、社長の心を表します。

 社長の心が、店舗のイスにも床にもガラスケースにもメニューにも現れます。

店舗の姿が、社長の心そのままだと言えるでしょう。

 ただし、社長や店長が、環境整備をどこまでやれば良いか分かっていないことがあります。
汚いものをほったらかしにしているというのではなく、「どの状態だと汚いのか」というレベルが分からないお店もあるのです。
 
自分たちでは汚れのレベルが当たり前になっていて、分からないところがありますので、第三者に聞いてみるとよろしいですよ。