銀行の借入の目安とは? |
もう一つの目安は、年間の粗利益を超えない範囲で借入をするというものです。
ただし、これらは一般的な借入の目安です。
事業そのものが上昇しているのか、下降しているのかによっても話は違ってきます。
また、経営者の健康状態や業界の景気など、個別に判断しなければいけないものがたくさんあります。
いつもお薦めしています「売上高年計表」や「得意先別の売上高年計表」、「得意先別ABC分析」、「製品別ABC分析」などを行なって、正しい判断を行うようにしてください。
事業経営は一点を静止した状態で見るのではなく、多面的に傾向を見ることが大切です。
銀行の借入を上手に使いましょう |
長引くデフレ経済下で、借金に対して恐怖心を持たれる経営者の方が多いように感じます。
以前のインフレ時代には、お金の価値が毎年下がっていくので、借金をしても、時間が経てば経つほど借金の額が実質目減りします。それゆえ、借金をして事業を拡大することに心理的抵抗は小さかったのではないかと思います。
ところが、デフレ時代では、需要が少なく、「借金を返せなくなるのではないか」という心配をされているのではないでしょうか。
しかし、会社は借入金を増やしても潰れません。
お金が無くなったときに倒産します。
あるいは、支払手形が半年以内に2回不渡りになったら倒産します。
極端なことを挙げますと、一度手形が落ちないとなっただけで、民事再生法の手続きを得意先に取られる企業もあるのです。
それほど、現金が無くなることは恐ろしいことです。
私が顧問先企業にお勧めしているのは、月商(月の売上高)の2ヶ月分の手元流動性(現預金+すぐに現金化できる資産+すぐに借入できる資金)を確保することです。
できれば、3ヶ月分あると良いでしょう。
もし、2ヶ月分の現預金(話しを分かりやすくするために、手元流動性の中で現預金に絞って書きます)がなければ、とにかく借入をしてください。
借入金を増やすと自己資本比率が悪くなるなど、社長様は考えられるかもしれませんが、現預金がなくなると会社が倒産します。
自己資本比率や流動比率などの指標は置いておいて、資金の確保をしてください。
そして、できれば社長様の連帯保証のない形で、長期借入金を銀行に交渉して下さい。
もし銀行が貴社に「借りて下さい」と営業に来ているのなら、それをうまく利用して有利に借りてください。
銀行は黙っていると短期借入金を勧めてきます。
必ず長期で借りるようにして下さい。長期の方が財務基盤が安定します。
メインバンクがなんだかんだと言って渋ったら、別の銀行と新たに取引するのも一つです。
メインバンクが、地方銀行でしたら、別の地方銀行や、日本政策金融公庫など、他の金融機関にも当たってみましょう。
するとメインバンクの対応が良くなるかもしれませんよ。
また、利益を出して内部留保する方法と借入では時間に大きな差があります。
されど、税引前利益が1,000万円あれば、約5倍の5,000万円の借入が可能になります。
内部留保によって、毎年1,000万円利益を出して、うち600万円のお金を貯めて5,000万円になるには、9年もかかります。
ところが、銀行から借り入れると、審査が通れば1ヶ月以内に5,000万円の資金を手に入れることができます。
108ヶ月(9年)と1ヶ月の差ですね。それだけ時間を買えたことになります。
また、内部留保で9年かかると、税金をトータルで3,600万円払うことになりますね(税金400万円×9年)。
つまり、5,000万円を会社に残すコストが3,600万円かかったということです(納税は企業の大切な義務ですが、これだけの支出があるという意味でコストと記しています)。
銀行の借入金でしたら、5000万円で金利2%とすると、年間100万円です。
ただし、節税効果がありますから、60万円が調達コストになります。
銀行からの借入金は調達コストの面からも、時間を短縮する面からも有利であることがお分かりいただけたかと思います。