何をさて置いても「経営計画書」を書くことを優先する

 

「経営計画書」を社長に書いてくださいというと、よくあるのが、「忙しくて、そんなのできない」という返事です。

そうは言っても、いつもパソコンの前に座って、メールを見たり、社員の報告書を見たりしているんじゃないですか?

社内の者で集まって、会議、ミーティングばかりしているのではないですか?

外出すると言っても、向こうからお誘いがある「ゆるい飲み会」ばかりに出席して、お客様のところへ表敬訪問はしていないんじゃないですか?

そんなもんだと思います。

ただし、「経営計画書」に関し、「1日で経営計画書を作れる」のような甘い言葉をささやいているセミナーもあるようですが、そうした甘い言葉に載ってはいけません。

「経営計画書」を1日で作るなんて、無理です。

3日でも無理です。

1週間でも無理です。

もしそんな短期に「経営計画書」を作れるというコンサルタントがいるなら、それは「他所の会社の経営計画書を写す」だけのことだと思いますよ。

他所の会社の経営計画書を使っても、ちょっとは成果は上がると思います。

でも、それは「麒麟がくる」で、斎藤道三が明智光秀が買ってきた鉄砲を1丁持った時のようなものです(笑)。

社長が自ら「経営計画書」を作らなければ、織田信長の鉄砲隊のような戦力にはなりません。

社長が自分で書かなければ、会社の全体が把握できないし、「経営計画書」に魂が入らないのです。

経営トップの仕事で、「経営計画書」を書くこと以上に重要な仕事はありません。

最優先すべきは「経営計画書」を書くことです。

 

 
    利益計画の立て方
 
ここでは「利益の確保」に関連して、利益計画の立て方について考えてみたいと思います。

利益は会社を存続させるために必要なもの
です。どれくらいの利益が必要なのかを、会社の目標数字として具体的に示すといいです。

そのために、年度が始まる前「利益計画」(予算)を立てることをお薦めします。

この場合の利益とは、「経常利益」を指します(営業外費用及び営業外収益がないところは、営業利益でも可です)。

利益計画を立てるときにはポイントがあります。

第一は、社長は数字を年単位で見ることです。

予算、計画を策定するときに、月々の数字を積み上げて、その累計によって予算を作る場合もありますが、これは社員の仕事の仕方です。社長は必ず先に年単位で利益を考えて下さい。

事業経営は逆算
です。

一年間の利益を出して、それを月々の数字に落とし込んでいくのです。

更に言えば、理想は5年後の利益を策定して、それを逆算して1年後の利益を出すのがいいですが、5年後を想定するのは難しいと思うので、3年間の利益目標(利益計画)を立てて、それから逆算するのが良いと思います。

ただ3年後も難しいという会社でしたら、まずは来期1年で組んでみましょう。


ポイントの第二は、「利益を決めてから、必要な売上額を設定すること」です。

予算を立てるパターンでよくあるのは、「これくらいは何とか売上が上がるから、これくらいの利益なら出せる。」という実現可能な売上数字から予算を策定するものです。

これは一見手堅くて卒のない策定のようですが、現在の延長上に予算を考えてしまっているパターンです。

そうではなく、必要な利益の目標数字を決定し、その利益を出すために必要な売上額を逆算して下さい。

利益の額を先に決めることが大切です。


では、利益の額をどのように決めるかということになりますね。

これは一人当たりの経常利益をいくらにしたいかで考えればいいです。

例えば一人当たり100万円とか150万円のような丸い数字で決めます。

経常利益は税引前の利益ですから、法人税等と配当金や役員賞与を支払うことを計算した上で利益を設定して下さいね。


そして、利益の金額は社長の意思で決めて下さい。会社が倒産せずに継続できる金額を社長の意思で決めればいいのです。

利益目標における科学的根拠のある数字などありません。

この数字は机上の理論で作り上げるものではく、会社を存続させる社長の社会的な責任から出てくる数字です。

社長の強い思いの入った利益額を設定して下さい。

それが三つ目のポイントです。

利益額は、社長ただ一人の意思で決めること
です。



さて、そこで利益額を出してみますと、大抵は予想よりも大きな額の利益になると思います。
場合によっては、始めから諦めてしまうような大きな目標に見えるかもしれません。

しかし、そこで「無理だ。」と思ってはいけないのです。

その数字は、社長が会社継続のために出した数字です。

この数字を達成するために、何をしなければならないかを考えることが大切なのです。

無難な数字だけを追いかけていたら、それこそ一気に下降して行きかねません。

利益計画の数字は、会社を継続させていくために死守しなければならない
数字だと意識をしましょう。

そして、どうやって達成するかを真剣に考え、事業を変化対応、革新させていくのです。

それが利益計画の重要な役割です。

利益計画を立てて、実際に対象となる期が始まったとします。そうして、なかなか売上が上がらない場合に計画の下方修正を考えることもあると思います。

例えば、半期ほど頑張ってやってみたけれども、計画に達成しそうにないなと社長が考えたとしましょう。

上場企業でしたら、開示した予算に対して未達が予想される時には、修正内容を公告しなければなりませんが、未上場ですと関係ありません(このブログは未上場企業を対象に書いています)。


無理だと思っても、あくまで利益計画の数字にこだわって下さい。
とことん、こだわって下さい。

利益計画の数字を達成するためにどうするかを考え、会社をイノベーションする
ところに経営の進化が起こります。


つまり社長自身が従来のやり方、発想だけではダメだと思う所が大切なのです。

この社長の意識改革こそが、利益計画の効用です。

計画を下方修正して、達成率を100%に合わそうとするのではなく、泥くさくていいと思うので「今までの考えにとらわれずに、どうすれば達成できるか」を考えましょう。


なお、利益計画を達成するために必要になるのが「販売計画」です。「販売計画」は、「商品別販売計画」、「部門別販売計画」、「得意先別販売計画」で構成されます。

これ以上の説明はかえって繁雑になりますので、書きませんが、社長の考えをまとめた「基本方針」と「利益計画」だけでも一度作られます事をお薦めします。