仏教的経営成功法 エッセンシャル版
 
2016年10月17日から10月30日まで、ブログ「古賀光昭のビジネス相談」に30回に渡って書いてきた仏教的経営成功法」を、ここでエッセンシャル版として大幅に書き直しました。
 
理由は元の文章が論文のような形式で書かれているため、経営者の方が読みにくいと思ったからです。
 
そこで、分量を減らし、説明の流れも文体も修正しています。今後は、ブログ版ではなく、このエッセンシャル版を正規版とさせていただきます。
 
「仏教的経営成功法」は、経営の成功方法を世界で初めて体系化したものです。経営者の方が成功した経験を述べられた名著はたくさんありますが、経営全体について体系的に成功論をまとめられたものは、この世にありませんでした。
 
それだけ、経営の成功方法を、”これだ”と極めることが難しいことなのです。
 
逆境におかれている会社様には「逆境に打ち勝つ手法」として、
順境の会社様は「自社の経営の足元を固める考え方」として
「仏教的経営成功法」を使っていただけたらと思います。
 

※本論考の著作権は古賀光昭にあります。無断転載、引用、使用を禁じます。
 
    経営者が逆境に勝つ仏教的経営成功法 
   
本論考で目指したところは3つあります。
 
第一は、どの企業が実践しても黒字になる経営成功法を提示することです。
すなわち、経営危機の逆境から百戦百勝できる経営の定跡(じょうせき)あみだし、提示することを目的としています。
 
第二は、その経営成功法は体系化されたものであることです。

体系化が必要とされる理由は3点あります。
一つは、人は体系化されたものでないと学習ができないからです。

二つ目は、体系的な知識は応用しやすいことです。体系は思考の中で骨格のような役割を果たします。柱といってもいいですね。骨格や柱がぶれなければ肉付けは容易であるし、間違いをしにくいのです。要の部分を抑える役割として体系化が必要です。

三つ目は、事業経営は不確かなものゆえに、体系的な方法論がいります。初歩的な原則を知らずに経営を失敗したり、無鉄砲な判断によって倒産したりするのは、経営において体系的な知識を習得していないことと、体系的な経営管理をしていないことが原因の一つです。手堅い経営をするには体系的な方法論を知っておく必要があります。
 
 
本論考で目指したものの第三は、経営成功法を実践した経営者が、お金を稼ぎ豊かになるだけではなく、人間性も向上するようなものであることです。社員や社会からも尊敬されるような経営者になれる成功法でないと私は意味がないと思っています。逆境に勝ち、お金持ちになっていただきたいですが、その成功は心を高めた結果であってほしいと願っています。


私は中学3年生の時から、日本神道、仏教、キリスト教、成功哲学や引き寄せの法則を学び、人間はどうすれば幸福になるかを考え続けました。


その結論は、人間の問題も成功も幸福も”心が起点になっている”ことと、全ては「縁起の理法」が関係しているということでした(「縁起の理法」は後ほど説明します)。

そして人間の苦しみを解決できる唯一の教えは仏教思想だと思ったのです。それは仏教が人間の苦しみに真正面から取り組んだ教えだったからです。

そこで、私は仏教思想を現代の経営に融合させて、経営の危機を解決できないだろうかと考えました。そして、体系化したのが「仏教的経営成功法」なのです。
 
 
仏教的経営成功法は、経営者が逆境に勝つ経営成功法でもあります。
 
では、仏教的経営成功法とは、どのような方法論なのかを、順を追って説明していきます。
 
コンサルタントは、問題解決のためにフレームワークという”思考の枠組み”を使います。私は経営の成功法を見つけるために、仏教思想の苦・集・滅・道(くじゅうめつどう)の四諦(したい)を使いました。
 
なぜ四諦を使ったかといえば、四諦が問題解決の完璧なフレームワークだからですね。


四諦とは、悟るための四つの段階のことを指し、現実をどのように把握し、どのように対処すべきかの具体的な方法論を四つの過程を用いて説いたものです。
 
 
四諦=苦諦(くたい)、集諦(じったい)、滅諦(めったい)、道諦(どうたい)

苦諦とは、この世はすべて苦であるという真理
集諦とは、その苦しみには様々な原因があるという真理
滅諦とは、その原因と取り除くことができれば、この苦も取り除くことができるという真理
道諦とは、その原因を取り除く方法は「八正道」であるという真理
 
  
ブッダは四諦の説明のために、病気治療にたとえています。それは、病気の状態を知り(苦諦)、その原因を知り(集諦)、病気が完治した本来の健康な姿を知る(滅諦)、そして病気を治すための治療法・薬を処方する(道諦)。こうした流れが四諦の流れなんですね。
 
現状の苦しみを正しく観察し、その原因を特定する。
そして、その原因が分かったのなら、その原因に応じた解決方法を実行する。
そういうものが四諦です。 ブッダは2600年も前に四諦というフレームワークにそって、苦しみの解決方法を教えていたのですね。
 
 
では、四諦の一番目、苦諦(くたい)、現状の苦しみを正しく観察することから、経営の問題を見てみましょう。
 
まず、「経営者には特有の四苦八苦がある」ということをお話します。

3年前に「経営を成功させる方法とは何か」を考えていた頃、お世話になった社長が亡くなりました。私は告別式に出席したのですが、その帰りに頭に突然浮かんだ言葉です。その言葉を家に帰える途中、考えて、文字にしてみました。
 
 
    経営者特有の四苦八苦とは?
 
「四苦八苦」(しくはっく)は仏教用語ですが、簡単に説明すると次のようになります。(参考書籍: 田上太秀監修 『図解 ブッダの教え』 東京、西東社、2013年)

四苦・・・生、老、病、死  (しょう、ろう、びょう、し)
八苦・・・四苦に社会生活上の苦しみ4つをたしたものを八苦という。

  愛別離苦(あいべつりく。愛する者と別離する悲しみ)
  怨憎会苦(おんぞうえく。会いたくない人とも会わなくてはいけない苦しみ)
 求不得苦(ぐふとくく。求めても手に入らない苦しみ)  
 五蘊盛苦(ごうんじょうく。心身が思うとおりにならない苦しみ)   

この仏教用語を、経営者に当てはめてみます


まず「生」(しょう)は、「生まれる苦しみ」です。
 
経営者に当てはめると「会社を創業する苦しみ」になります。
創業するには一定の資金が必要になるし、立ち上げ時には売上が上がらないなど苦労することも多いです。サラリーマン時代には、自分が稼ぐことはなくても給料が決まった日に振り込まれていました。ところが、経営者になると給料の保証がなく、不安定な身分になってしまいます。

また、現在の経済環境は厳しく、そうした条件の元で船出をすること自体が苦しみといえるかもしれませんね。

それからもう一点、PLC(プロダクトライフサイクル-製品の寿命を四つの時期に分けたもの。導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つ)の視点から製品寿命に当てはめてみると、「導入期」の難しさになりますね。製品が市場に出たばかりで、なかなか芳しい売り上げがない状態の苦しみでもあります。
 
「老」「老いる苦しみ」です。

経営者に当てはめると「会社が衰退していく苦しみ」です。
PLC(プロダクトライフサイクル)に当てはめると、成熟期から衰退期に入った製品をメインに販売している会社の苦しみです。売上や利益が減少していく苦しみ、業績不振の苦しみですね。あるいは、業界全体が衰退していくこともあります。会社に勢いがなくなっていくことを実感する苦しみでもありますね。
 

「病」
は「病気になる苦しみ」です。
 
会計的には赤字会社が相当しますが、「病」はどちらかというと、社内で揉め事が起きている苦しみです。あるいは、社員とのコミュニケーションがうまくいかずに、社内の雰囲気が悪くなり、社員のモチベーションが落ちている状況の苦しみです。

そのほか、横領する人が出るケースも含まれます。セクハラをする人が出ることも含まれます。労働組合と折り合いがつかないケースも含んでいいでしょう。 あるいは社外の人とトラブルになるケースもあるでしょう。

そうした「会社内外での不満、摩擦、軋轢、トラブル」などが「病」にあたります。
また「大企業病や硬直的な官僚組織」になっている会社もこれに当てはまります。

 
「死」は死ぬ苦しみです。これはまさしく「会社が倒産する苦しみ」ですね。 

 
次に「八苦」ですが、一つ目は「愛別離苦」です。 仏教では、愛する人と別れる苦しみと言われています。
 
会社だと、大事に育てた社員、期待していた社員に辞められることを指します。また長年取引をして付き合ってきた得意先や仕入先に逃げられることでもあります。 経営者が「この社員は裏切らない、このお客様は大丈夫だ」と思っていた人々に去られる苦しみです。
 

「怨憎会苦」
は、嫌な人に会う苦しみです。
 
私も経験がありますが、理不尽なクレーマーだけど、言葉を返すことができず、ただ「申し訳ございません」と頭を下げて付き合わなければならないという苦しみはありますよね。

それから、私のいた会社もそうでしたが、親会社に仕切りなど厳しい要求をされるのですけど、どうしても断れないということもありますよね。行政機関の決まりごとで、やっかいなこともありますでしょう。

あるいは、社員でも反抗的な社員や使いづらい社員はいるでしょう。物言う株主も対応が難しいのではないでしょうか(株主に怨憎会苦というと失礼に当たりますけどね)。
ただ、そうした嫌な人とできれば接したくはないが、どうしても付き合わなければならないこと、そうした苦しみのことを指します。
 

「求不得苦」
。これは、求めたものが得られない苦しみであり、ほとんどの人が苦しむものです。
 
ある意味、悩みの全てはこの言葉に集約されていると言っても過言ではないでしょう。自分が思うように物事が進まない、他人が行動しない、思うとおりにならない苦しみです。
 
経営の場合ですと、銀行に借り入れしたくても、できないことがあります。いい人材が欲しくても応募してくれない、応募しても入社してくれないことはあるのではないでしょうか。
 
経営は黒字でうまくいっていても、人から尊敬されない苦しみもあるでしょう。考えれば山ほどある苦しみです。 

 
「五陰盛苦」は、心身が思うようにならない煩悩による苦しみです。
 
成功すればするほど、誘惑も増えてきます。男性経営者だとお酒や女性に走るケースがありますね。社長が秘書と社内不倫をしてしまったために家庭が崩壊したり、社員からの信用を失ったりすることもあります。分を過ぎた欲を持ってしまって派手な生活をして、失敗してしまう苦しみもあります。
 
このように、仏教用語の「四苦八苦」を使うと、「経営者特有の四苦八苦」を体系的に理解することができます。


さて、仏教の四諦では、苦を見つめたあとは、その原因を探る段階(「集諦」 じったい)になります。
 
では、会社の「老」(業績不振の苦しみ)、「病」(会社のトラブルの苦しみ)、「死」(倒産)という苦の原因は何でしょうか?
 
 
   経営の苦しみの原因とは
 
結論から述べますと、経営の苦の原因は「経営トップの心」の問題と、「経営トップの知識」の不足です。(経営トップとは、中小企業では代表取締役社長、大企業では執行役員を含めた取締役以上を指します)
 

★経営の苦しみの二大原因★ 
 
 (1) 経営トップの心
 
 (2) 経営トップの知識
    
    
会社の「老・病・死」、すなわち事業の不振・会社のトラブル、倒産は、「経営トップの心の問題」か、「経営トップの知識の問題」か、あるいはそれら両方の問題によって引き起こされているのです (大企業の場合は、執行役員や取締役も対象になります)。

事業がうまくいかず、倒産しそうならば、経営者の心が”何か”間違っているか、経営手法に関する見識が”不足”しているかなので、その両方を振り返ってみることが必要になります。


話が複雑化しないように、まず「経営トップの心」だけを対象にして説明を続けます。

「経営トップの間違った心」は、経営を危機に陥れます。
 
間違った心の代表的なものは「放漫経営」及び「お人好し」です。
これらは倒産の原因でもあります。


まず、「放漫経営」は、経営トップの慢心が生み出したものです。 正当な自信レベルであれば問題はないのですが、他人の意見を全く聞くことができず、「俺の判断は常に正しい」だとか「俺以外の考えは全部間違っている」といった心境になっていると、その心は増上慢であり、それは放漫経営に繋がってしまいます。 あるいは、自信過剰までには至らなくても、油断ということもありますね。特に資金繰りに関し「何とかなる」という油断は倒産に直結してしまいます。 

ちなみに、「放漫経営」をする経営トップのタイプは、明るく豪快なタイプが多いです。中小企業だと、営業力がある社長ですね。社外の人には物腰が柔らかで、かつ見栄を張ってお金を使うところもあり、他社の社長や営業マンなどには受けがいいんです。ところが、社内では自己中心的であり、公私混同し、怒りっぽいパターンですね。社屋の特徴としては、社長室や応接室は豪華で華美だが、社員が使う事務室は汚いです。


もう一つの「お人好し」は、一部は経営者の「心の弱さ」が出ているところでもあります。連帯保証人を断わることができないで、保証人になり、破産した経営者がたくさんいます。そうした連帯保証人を断れないところは優しさとも言えますが、「心の弱さ」の部分でもあります。たとえ相手が気の毒であっても、会社をまきこむような連帯保証人になってしまってはいけないのです。


また、騙されることは「悪の知見」が足りない面でもあります。

ライバル企業から「うちはどうすればいいでしょうか?」と聞かれて、正直に答えてしまうような「お人好し」だと会社は潰れてしまいますよ。「お人好し」で経営をしていはいけません。

なお、こうした経営トップは、えてして真面目なタイプに多いです。中小企業だと、お金に疎く、工場使って経営をしている専門職的なタイプの社長(技術系の社長)が多いですね。


では、経営トップは心の過ちをどうやって見つければいいのでしょうか。
そして、どのように解決していけばいいのでしょうか。
 
 
    苦を取り除く八正道
   
2600年前、四苦八苦を説いたブッダは、それをどのように克服すると説いたのか。
そこで説かれた教えが、八正道(はっしょうどう)という反省修法です。そのため、四諦は、別名「四諦八正道」とも呼ばれます。  

「仏教的経営成功法」でも、ブッダの教え「四諦」の解決方法である「道諦」八正道(はっしょうどう)という反省修法を使って解決を導きます。
 
ただし、八正道は「八つの修行法」なので、修行者ではない経営者にとっては難度が高いです。そこで、「仏教的経営成功法」の中では絞り込みをし、実践しやすく、かつ重要性の高い3つを活用することとしました (古賀注:3種以外の反省修法の応用に関しては、機会があれば研修等で説明します)。 

八正道とは、次の八つの反省修行法です。

正見(しょうけん)   正しいものの見方
正思惟(しょうしい)  正しいものの考え方
正語(しょうご)     正しい言葉
正業(しょうごう)    正しい行い
正命(しょうみょう)   正しい生活
正精進(しょうしょうじん) 正しい努力
正念(しょうねん)    正しい教えを心に留め忘れない
正定(しょうじょう)   正しい精神統一

このうち、仏教的経営成功法では、正見、正思惟、正語の三つを使います。
 
心を練る、鍛錬する方法は、ぼんやりとした感覚的なものではありません。体系的に行うものです。ただ座っていれば良いというのは、方法論の一つであって、それだけでは全然足りません。心を見つめるには体系的に実修することで、もれなく、だぶりなくすることができるのです。
 
「仏教的経営成功法」では、心を見つめる基準と種類を具体的に教えます。

最初は、正見からです。正見は、偏見や固定観念に執着せず、「縁起の理法」(えんぎのりほう)を見極めて、物事を正しく見ることです。まずは正しく物事を見ることから始めます。正しい認識を最初に得るためです。
 
ここで出ました「縁起の理法」とは、因縁生起(いんねんしょうき)の略で、あらゆるものは「因」という直接の原因と「縁」という間接的な条件がお互いに関係しあって生じたり滅したりしていることを意味します。

植物にたとえると、花は種という原因(因)があって、土、水、光などの諸条件(縁)によって、成長し開花します(果)。そして、その植物を食べる動物もいれば、植物の光合成によって酸素を吸っている人間もいます。すべてのものは因と縁が関係しあって結果になり、その結果もまた次の因や縁になって連鎖しているということですね。

すなわち、時間的にも、空間的にも、原因と結果は連鎖し続けて世界は存在しているというのが「縁起の理法」です。

そして、「縁起の理法」を使う「正見」を古賀流に説明すると「偏った見方をするのではなく、物事を一回白紙にして見る。そして直接原因と間接原因(付帯条件)とその結果を正しく認識する」ということになりますね。
 
会社の今の状態も、因と縁によって成り立つ結果であるので、経営者は正見によって、会社の状態を「ありのままに正しく」見なければなりません。そのときに縁起の理法を使って、なぜそうなったかの原因(因)と付帯要因(縁)を客観的に見るのですね。

例えば、会社の倒産という事象を例にします。この世の事象は人の心が起こした選択の結果なので、倒産の根本原因は経営トップの心が「因」です。そして「縁」は、経営の途中で起きてくる出来事を指します。それは、過大な設備投資であるとか、マーケティングのミスだとか、融通手形を切ってしまったことだとか、犯罪に手を出してしてしまったなどです。

漠然と会社の状況を見るのではなく、なぜこのようなことになったのかを、主原因と付帯原因に分けて整理すると、大きな勘違いをしないで会社を正しく見ることができます。

ところが、会社の状態を偏見や固定観念で見てしまうと、実態が歪んでしまって、正しい判断ができないし、正しい意志決定もできなくなります。そうすると、解決方法も、間違ったものになってしまいます。 現在の経営状態がどのようになっているのかを正しく見て、その因と縁が何かを見極めてください。
 
また、「正見」は会社の状態だけではなく、他人の観察にも使うことが大切です。お客様、社員、得意先、取引先など、すべてに応用ができるので、一旦相手を白紙の状態で見て、偏った見方をしないで、正しく見ることを心掛けるといいでしょう。
 
 
    どうやって正しく思うのか?
 
八正道の二番目は、正思惟です。「ただしく思う、正しく考える」ことです。
 
ただし、漠然と「正しく考える」といってもつかみどころがありません。そこで、ここでも仏教のフレームワークを使います。 使うのは、六大煩悩「貪・瞋・癡・慢・疑・悪見」(とん・じん・ち・まん・ぎ・あっけん)からの4つです。六大煩悩は間違った心の代表なので、それと対比させながら経営トップの誤りやすい心を分析してみますね。

まず、「経営トップの心」の問題の一番は「執着」だと私は考えています。それは貪欲、むさぼるような欲、分不相応な欲望、過ぎた欲望のことです。

事業を成功させるにはある程度の欲は必要ですが、それが度を過ぎたり、異常になると人生も経営も失敗してしまいます。

経営トップの失敗事例として倒産を研究していると、分不相応な工場建設、事業拡大、本社事務所建設、機械設備などといった設備・資産への投資が多く見られました。成功すればするほど欲が深くなり、貪欲になることが多いのです。
 
また、自分の器以上に企業を大きくしようとするケースや、お金や女性で身を滅ぼしてしまうことも多いです。この過ぎた欲望の拡大、執着が問題となる心なのですね。 こうした場合の執着する心を、六大煩悩の貪欲(とんよく)の貪(とん)に分類します。


経営トップの心の問題の二番目には「慢心」があります。経営トップは慢心しやすい人が多いです。元々実力があるから独立できるので、自惚れやすい面があるのかもしれません。倒産企業の失敗事例でも慢心しているケースが多く見受けられました。

そして、大企業の経営トップが失敗するケースのほとんどは、この慢心です。大企業は経営資源も豊富で、経営トップは経営に対する見識も能力も持っているのであるが、慢心して失敗しています。特に、実績を上げたり、世間に注目されたときなど、大きな成功を達成したときには要注意です。いつの間にか自分は特別な存在だと思ってしまうこともあるので、優秀な人にとって落とし穴になります。 そしてこうした場合の心を六大煩悩の慢(まん)に分類します。


三番目には「愚かさ」です。倒産事例で驚かされるのは、お人好しの経営トップがうまい話に簡単に騙されていることです。騙される本人は薄々気づいていてもブレーキが利かないのようです。あるいは、心の弱さからリストラや事業撤退の決断できないこともあるでしょう。根底には「良い人」だと思われたいとか、嫌われたくないといった弱い心があるのですが、結果的には愚かなことといえるでしょう。

また、不勉強で知識、見識が足りないことも「愚かさ」です。知識を吸収する取り組みとしての側面もとても大切です。
そして、これらの心を六大煩悩の愚癡(ぐち)の癡(ち)と分類します。
 
 
貪、慢、癡(とん、まん、ち)の三つを経営トップの心の問題として挙げましたが、もう一つあります。 それは「怒り」です。

最近、パワハラが社会問題になっています。このパワハラの元になっているのが「怒り」です。自分自身が分からなくなるくらい怒る経営トップがいますよね。些細なことや誤解で怒り頂点に達し、社員を追い詰める経営トップは結構いるでしょう。

自分の怒りの感情をコントロールできず、感情のままに振り回されて失敗してしまう経営トップの心を六大煩悩の瞋恚(しんに)の(じん)と分類します。


さて、経営トップの心の問題を、重点的なものから「執着、慢心、愚かさ、怒り」の順に四点を選んだ。そして、六大煩悩から、「貪、慢、癡、瞋」に分類しました。
 
煩悩の根源として仏教では、貪、瞋、癡(とん、じん、ち)を三毒(さんどく)といいますが、「仏教的経営成功法」では、経営トップの心の間違いを重要なものから並べ替え、順序を「執着、慢心、愚かさ、怒り」とし、それぞれ「貪・慢・癡・瞋」(とん・まん・ち・じん)としました。

そうして、これらを「経営トップの心の四毒(しどく)」と呼ぶことにします。

この「経営トップの心の四毒」が八正道の正思惟を行うときのフレームワークです。
 
この心の四毒のフレームワークを使い、四毒の思いが出てきていないかを反省するのです。 
 
たとえば、一定の瞑想する時間を取り、自分は「分を過ぎた欲」を出していないだろうか(貪)、自惚れて慢心していないだろうか(慢)、日々学習を怠っていないだろうか(癡)、すぐにカーッとなって怒ったりしなかったか(瞋)のように、一つ一つを順番に反省してみてください。

あるいは、普段の仕事や生活の中で、「貪・慢・癡・瞋」の四毒の思いが出たら、その都度反省して改めるようにしてください。
 
漠然と「正しい心は何かな?」と反省するのではなく、「貪・慢・癡・瞋」の四毒を使って、順に反省すると反省も深まります。
 
 
ここまで、経営トップの心の四毒の思いが出ていないかを八正道の正思惟によって反省することを述べました。しかし、もっと積極的な方法として、四毒の思いを出さないようにするだけではなく、四毒の反対の思いを出すようにする方法もあります。

それは「与える愛や利他の思い」を出し実践することです。

執着の真逆の思いを出すことによって、執着を克服する道筋ができます。

執着の真逆の思いとは、「従業員を幸福にしたい」と思って経営をしたり、「お客様や社会の幸福に貢献したい」と思って経営を実践したりすることです。心を込めて仕事をすることでもあります。社会の繁栄や発展に寄与する製品を開発することでもあります。そうした利他の思いを出し、実践することで執着を克服していく方法もあります。

ただし、与える愛や利他の思いは、最初は少し意識をしないと出てこないものなので、与える愛や利他の思いがあったかを毎日点検しながら、与える愛や利他の思いを実践する習慣を身につけるほうがよいでしょう。

    経営者は正しく語れ!
 
八正道の三番目は、正語(しょうご)です。「正しく語る」、「正しい言葉」です。

経営トップは株主のようなステークホルダーや、他の役員や従業員に話す(語る)機会がたくさんあるでしょう。

仏教的経営成功法では、何を正しく語るかというと、重要な言葉を二種類に絞っています。

それは、「会社のビジョン」と、「従業員への言葉」です。 「会社のビジョン」には、経営理念、基本方針、行動指針などが含まれます。経営トップの頭の中にあった経営理念や基本方針などを言葉にして経営計画書に記載するのです。そして、経営トップは事あるごとに、経営計画書に書いてあることを語っていかなければなりません。

経営理念はすぐに文字にできないかもしれませんが、基本方針や行動指針などは今まで書いていなければ書いた方がよいし、既に書いているものがある会社は、内容を見直すことですね。なぜなら、経営トップが自分の心を見つめ、心境が高くなっているなら、当然基本方針や行動指針も変わってくるからです。

また、経営ビジョンはお客様、株主や取引銀行にも語っていかなければなりません。中小企業では経営ビジョンを語るのを嫌がる社長もいらっしゃいますが、社長の大事な仕事として「我社は何に貢献していくのか」、「我社は何のために存在しているのか」を堂々と語ってください。
 
 
「正語」の二つ目は、役員、従業員、社員に対する「正しい言葉」です。
 
「仏教的経営成功法」で従業員に対する「正語」の基準には仏教思想の「四無量心」(しむりょうしん)のフレームワークを使います。

「四無量心」とは、慈・非・喜・捨(じ・ひ・き・しゃ)の四つのことであり、個々の説明は次のとおりです。

慈・・・他者の幸福を願う心
非・・・他者を不幸から救い出す心
喜・・・他者の幸福を見て満足すること
捨・・・他者を差別しないこと


この他者を「社員」なり、「従業員」に置き換えて、そうした思いで社員に接し、言葉を発するといいです。

たとえば、社員の幸福を願って言葉を発します。それは「慈」の心であり、「愛語」でもあります。

また、社員が間違ったことをしたときには教育的見地から、叱ることも必要になりますが、それは社員を苦や不利益の状態から救い出す「非」の心です。相手が堕落しないように、失敗しないように「厳しい愛」もときには必要です。

社員が成功したり、幸せになったりしたら、嫉妬をすることなく、素直に祝福の言葉をかけてあげることは「喜」の心です。

そして、社員を差別せずに公平に扱うことは「捨」の心です。

このように「四無量心」の思いを持ちながら、従業員に接していけば、自ずと言葉は正されていきます。経営トップは一日を振り返るときに、役員や社員に対し四無量心に反した言葉を発していなかったかをチェックすると反省しやすいですよ。

なお、この四無量心については、社員だけではなく、「お客様への心や気持ち」としても応用できます。上記四無量心の説明文の「他者」を「お客様」に書き換えると、そのままお客様への思いや接し方にすることができます。
 
  
    反省修法の注意点
 
経営の問題の核を「経営トップの心」と「経営トップの知識」の問題に絞り、ここまでは経営者の心の問題の解決方法について考察してきました。簡単にまとめてみます。 
 
経営の問題の核

1.経営トップの心の問題 = 執着、慢心、愚かさ、怒り

解決方法 = 四諦(苦・集・滅・道)にならい、八正道の反省修法を応用する。

(1) 正見   縁起の理法にもとづいて固定観念なく現状を見極める
(2) 正思惟  四毒(貪、慢、癡、瞋)がないかを反省する
          利他の思いと、その実践
(3) 正語   四無量心(慈、非、喜、捨)の思いで社員やお客様に接する
          経営ビジョンをつくり経営計画書に記載して、それを発信する
 
ここでの注意点は、反省によって自分を否定する方へいってはいけないということですね。
明るく豪快な方だと大丈夫だろうが、真面目なタイプや繊細なタイプの方が反省修法をすると自己卑下をしたり、自己否定したりするケースが多いです。反省をしながら、「自分はダメなんだ」と、自分を責めて落ち込んでしまうのです。そうなっては逆効果なのです。

我々は存在するだけで尊いのです。 たとえで言うと、ダイヤモンドは磨かなければ輝かないが、磨く作業が反省です。そしてダイヤモンドは我々自身であり、心です。ダイヤモンドは磨かなければ、石ころと変わらないように見えますが、磨けば輝くし、美しいです。やはりダイヤモンドは、ダイヤモンドなので、価値はあるのですよね。ただし、磨かなければ、その美しさは出ないのです。反省は必要ですが、必ず自己肯定をしてください。

コツは、反省した後に自分の心を見つめて、ネガティブな消極的な思いが残っていたら、それをポジティブな、積極的な思いに入れ替えておくことです。反省によって、自分は本来持っていた素晴らしい自分が輝くようになっていると思っていただきたいです。

何か間違ったことを言ってしまった。それを反省する。そこで、「ああ、俺はダメな人間なんだ」と思ってしまったら、「いや違う!俺はまた良くなって、どんどん成長しているぞ!」と考えるのです。「今日も間違いに気づいた点は良かった。以後気をつけよう。明るく笑顔で接していこう!」と前向きな思いに切り替えるのです。

思いの切り替えが難しい方は、言葉の力を利用してください。心にマイナスの思いが残っていたら、「うれしい」、「楽しい」だとか、「ありがとう」、「愛しています」、「ついてる」などの明るい言葉を連続で唱えるのです。心が積極的な想念に満たされたと実感するまで言葉を繰り返すとよいでしょう。

反省は経営の成功には必要ではあるが、反省修法をすることで落ち込んでしまわず、心の中は必ず積極的な想念で満たすようにしてくださいね。
 
 
    経営は知識の範囲で活動している
 
 次は経営トップの知識の問題になりますが、経営トップに「どのような知識があって、どのような知識がないか」という事実は、経営を左右する重大な問題なのです。
 
なぜなら、経営トップが得ている知識が、実は経営の意思決定を決め、経営のかじ取りを決めているからです。

企業の命運は経営トップの心が握っていますが、経営トップと社員と顧問などの知識の範囲でしか、企業は活動できないのです。
 
我々は自分たちの持っている知識の範囲で行動していることを知っておかなければなりません。知らないことはできないのです。

倒産しそうな会社の社長が、八正道によって心を正しくして、心を綺麗にしても、もし倒産を防ぐ様々な知識がなければ倒産してしまうのですよ。

知識を得ることは、心を正すことと同じく絶対必要なもので、どちらも欠けてはいけないものなのです。
 
仏教的経営成功法では、体系的に「心の問題」と「知識の問題」との二つに分けることによって、経営者の思考を整理し、実践しやすいように工夫しています。心を正すことと、正しい知識を得ることを実践しやすいようにしているのです。  

仏教的経営成功法の特徴は、
仏教思想によって心の面を改めるだけではなく、経営手法の知識を得ることも強調するところなのです。

    経営トップが知るべき知識

経営トップが知るべき知識
について、最初に頭に入れておくべきことは、八正道の「正見」で触れた「縁起の理法」です。ここでは「正見」のところとは違って存在論から説明をしましょう。

貴社の存在について考えてください。貴社はどれだけの人やものによって支えられているでしょうか?貴社のサービスを誰かが購入してくれているはずです。そのお客様が貴社のサービスを買うために、どれだけの努力(勤労など)をしているでしょうか。もしかしたら、家計がギリギリなのだけれども、貴社のサービスにお金を払っているのかもしれません。

あるいは、社員がいれば、社員も経営者を支えてくれています。働き分の給料を払っているとはいえ、会社がたくさんある中で貴社を選んで働いてくれているのです。そうした縁(えにし)もあります。事務所、インターネット、水道、電気、これらもお金を支払っているとはいえ、たくさんの方の発明や努力や働きによって恩恵を受けているものです。
 
一方、あなた自身の存在はどうでしょうか?この世に生まれることができたのは、両親がいたからですよね。そして、赤ん坊のときに両親や育ててくれた人がいたからこそ、今のあなたが存在しています。そして、太陽の光や熱も空気も水も、そして地球も、全てが与えられて生きてこられたのです。
 
「縁起の理法」は原因(因)と結果(果)の連鎖ですが、自分の存在という結果(果)は、たくさんの人やものや環境の愛(因)によって成り立っているということを知ってください。
 
自分を生かしてくれている愛を知ることが、恩を知ることです。恩という漢字は、因の下に、心という漢字があります。心を「思いやり」や「愛」というものだとするならば、因となっている愛ということですよね。
 
たくさんの恩を知って、その恩に報いようとして、人を使い、ものと使い事業をするのが経営だと思うのです。恩返しが経営ではないでしょうか。
 
 
さて、ここでの「縁起の理法」の説明は、自らが果の場合のことでしたね。ベクトルが逆になりますが、もう一つの視点は、自分が因として、どのような種をまくのかということです。
 
つまり、良き種をまけば、良き果実を生むが、毒麦の種をまけば、毒麦が実るということですね。引き寄せの法則はこのことを言っているだけですよ。
 
今、毒麦が実っていても、良き種をまくようにすれば、いずれは良き果実が実るのです。
どうか、「縁起の理法」を前向きに捉えて、経営に活かしてしてください。


「縁起の理法」の次に、経営トップが知るべき知識は、経営に関する手法、メソッドです。

これは「必ず知っておかなければならないもの」、「対象となる企業として知っておかなければならないこと」の二種類があります。

まず、「対象となる企業として知っておかなければならない知識」とは、その企業特有の経営課題に対する対処方法や改善方法です。

特有の課題に対する知識ついては、「そのことを1年前に知っていたら倒産することがなかったのに」、「そのような方法があるなら、もっと資金繰りが楽になっていたのに」というように、その知識を知ってさえいれば、倒産や失敗をしなかったというものがあります。

ところで、こうした「知らない知識」を知る方法は二つで、一つは「自分で調べて学ぶ」方法。もう一つは、コンサルタントや顧問や社員など、知っている人から聴く方法です。会社法や民法や税法などは、弁護士や税理士に知らない内容を聴けばよいでしょう。
では、仮に倒産しそうな会社があるとするならば、どのようなことを知識としてもっていればよいでしょうか?

貴社の顧問なり、コンサルタントなり、経営幹部に聴いてみるとよいです。「倒産を防ぐために必要な経営手法とは何だろうか?」と。そうして、そのコンサルタントが出してきた経営手法の中で自分が知らないものがあれば、それを学習すればよいのです。
 
 
    倒産を防ぐ10種の経営手法
 
 ここで私は一例として倒産を防ぐ経営手法を10種挙げてみます。この中で知らないものがあれば、その部分について調べていただくと良いです。

この10種挙げる方法は他の経営課題についても活用できます。
社員教育に悩んでいる会社であれば、「社員のモチベーションを改善する手法とは何か?」と専門家にたずね、10種類ほど挙げてもらい、もし知らない手法があれば、それを自分でも学習するのです。一人の専門家で不安な場合は、複数の専門家に提出させると、よりいい学習ができるでしょう。

では、具体例として「倒産を防ぐ方法」として10種挙げますが、この10種は業績不振の企業にも使えるものです。

① 借入金返済のリスケ
② 限界利益率の向上
③ 月に一回の棚卸
④ 不要資産の売却
⑤ 不採算部門からの撤退
⑥ 経営計画書の策定及び運用
⑦ 日次決算
⑧ 資金繰り表の策定及び運用
⑨ 経営トップのお客様訪問
⑩ ランチェスター戦略(弱者の戦略)
  ※個々の手法についての詳細な説明は本論考の趣旨ではないので、大まかな説明になることを御了承ください。

① 借入金返済のリスケ

倒産しそうな企業は、資金繰りが悪化しているのが普通です。そうであるならば、金融機関の支払をリスケ(リスケジュール)することです。リスケとは、金融機関の支払条件の変更であり、具体的には半年間元本の返済を免除してもらって金利だけを支払うという方法です。実際のリスケ開始まで2か月くらいかかるので、メインバンクに早目に相談し対応するのがポイントです。必要書類は次のものがあります。

ⅰ)試算表
ⅱ)資金繰り表
ⅲ)銀行別借入残高表
ⅳ)返済計画表(年間返済額を各行の残高で比例配分したもの)
ⅴ)事業計画書   
・固定費削減表   ・収支計画表   ・SWOT分析


なお、リスケにおいて注意すべきことがある。一つ目は、バックデートで返済猶予してもらうことです。例えば、銀行は11月にリスケ交渉を受けていると「では来月の12月から」と翌月からリスケしようとします。この場合は、「バックデートできるはずです」と主張して、申請当月からのリスケを交渉することです。

二点目は、元本返済猶予とともに、金利をそのまま据え置いてもらうように交渉することです。リスケを理由に金利を上げることを言ってくる銀行がありますが、決してそれに応じてはいけません。 また似たようなこととして、連帯保証人や新たな担保、定期預金など、銀行の要望には応じないことです。これらも必ず応じなければならない決まりはないので毅然として断ることです。 中小企業だと銀行から借り入れをするときに、信用保証協会の保証が入っているケースがほとんどです。その場合、リスケをすると信用保証協会への保証料が追加で発生します。逆に、リスケに応じてもらえなかった場合は、信用保証協会が代位弁済することになります。代位弁済とは、信用保証協会が代わりに銀行へ元金を支払ってくれることです。そのことで、3~6か月銀行への支払をしなくてよいので資金繰りは楽になりますが、遅延損害金が14.6%もかかり、新規融資が受けられなくなるというデメリットがあります。
 
 
② 限界利益率の向上

企業収益のすべては限界利益です。限界利益とは、売上高から変動費を引いたもので、会計的には「売上総利益」だとか「粗利」だとか言われるものです。変動費は外注費や材料費などの社外費用(社外に支払をするもの)で、一般的には売上の増減にしたがって変動する費用なので変動費と呼ばれます。

売上高-変動費=限界利益

社員の給与や販売費用などの会社の経費すべての支払源泉は、この限界利益です。企業にとっては売上高よりも限界利益(粗利)がどれだけあるかが大切なのです。すると、限界利益率の向上を図ることがポイントになります。

限界利益率を良くするには、それは変動費率を下げることです。毎月の売上高が1,000万円の会社があるとします。変動費率が60%だとすると、限界利益率は40%です。変動費が600万円で、限界利益が400万円という計算です。

では、変動費率を1%下げるとどうなるでしょうか?変動費率が59%になり、変動費は590万円です。限界利益率は41%で、限界利益は410万円です。変動費率が1%改善されたら、売上高の1%分の利益が増えるのです。この場合、年間では120万円の増益になります。では、このケースで外注先又は仕入先にいくらのコストダウンを依頼しているかというと、約1.7%のコストダウンです。

このように、変動費を下げることは、利益に対する効果が大きいのです。自社も懸命に努力していることを示し、取引先にコストダウンを協力してもらうようにお願いするといいでしょう。内製しているもので外注できるものは外注も検討すべきです(ただし、内製コストと外注コストを比較すること)。

それから、全社で限界利益率がいくらと出すのではなく、製品別、顧客別、地域別などで限界利益率を出すことです。限界利益率の高いものを重点的に売り上げを伸ばした方が利益効率が高いです。 もう一点、気をつけるべきことは、限界利益”率”だけではなく、”金額”でも見ることです。率が低くても、総額が大きくて会社の利益に貢献している場合もあるからです。


③ 月に一回の棚卸

棚卸を年に一回しかしない会社も多いでしょう。多い会社でも四半期に一度くらいだと思われます。経営状況が悪い会社は、月に一回の棚卸の実施すべきです。 仮に月の売上高が1,000万円として、在庫が1,000万円以上あったとしたら、売上以上の仕入れ又は製造をしているということです。棚卸をすれば、どれが売れている商品で、どれが滞留在庫になっているかがはっきりとわかります。

また、在庫がどれくらいの日数で入れ替わっているのかを見る在庫回転日数を見て、それを向上させるのも大切です。

棚卸資産÷売上原価÷365日=在庫回転日数

もし在庫回転日数が60日なら、60日で在庫が出荷されていることになります。逆に言えば、60日間、在庫が滞留しているということです。在庫回転日数を短くすればするほど、資金繰りは楽になります。在庫管理のときにできるだけ早く売れなくなってきた商品を見極め、早めに仕入を減らす、生産を減らすよう手を打つのです。 また売れなくなってきた商品はセット売りなどによって、売り切ってしまう工夫も必要です。


④ 不要資産の売却

事業の用に供していない遊休不動産などがあれば売却してください。ほとんどの不動産は売却すると損失が出るでしょうが、それは特別損失になって損金になり節税になります。売却によって現金が入り、かつ節税もできる一挙両得の方法です。


⑤ 不採算部門からの撤退

不採算部門からの撤退です。ただし、単純に今が赤字だから撤退するというわけではありません。現在は赤字でも、将来が見込めるものは残さなくてはなりません。部門より小さな単位になりますが、成熟商品で、仕入額又は製造原価を下回る売上しか上げられないものは切り捨てなければいけません。しかし、仕入よりは高い金額で売れている商品であれば、その分の利益(増分利益)があるため、その商品を削減した場合に減る固定費と利益との比較によって検討することになります。


⑥ 経営計画書の策定及び運用

経営計画書については、正語の反省のところで触れたし、この後でも触れますが、会社にとって最も大切な書になるものです。内容は、社長の意思、ビジョン、方針を書いたものになります。 数字に関しては5か年計画をのせた方がよいですが、倒産の危機がある会社であれば、まず1年間の年度計画を立ててください。要領としては、損益計算書の形式で、売上計画と経費の予測を月毎に立てて、予算実績管理表を策定します。そして予算額の横か下に実績を記入できるようにして、毎月自分たちで数字を埋めていくのです(予算数字の上に実績を上書きするタイプでも可)。

そして、予算実績管理表の下の部分に、キャッシュフロー計算書の簡易版を作るとよいです。 売掛・買掛の増減、資産の売却・購入を入れてキャッシュフローが分かるようにすれば、資金の予測が簡単にできます。キャッシュフローの見える化ができるので、この表は絶対に作るべきです。

なお、予算の数字については、期中の売上が未達成でも、決して修正をしないでください。予算と実績の差異について原因を考え検証することも大切だからです。


⑦ 日次決算

日次決算は、倒産しそうな会社だと導入したほうがよいものです。上記に書いた限界利益(粗利益)を社長が毎日自分でつけて、数字を把握するものです。 売上高と変動費を記入して限界利益を出し、次に固定費を引いて利益を出します。この作業を毎日することによって、社長は会社のリアルな数字を知ることになって、経営のスピードが上がります。 また、社長が限界利益を毎日意識するために、社長が利益志向にもなります。⑥の経営計画書で述べた予算実績管理表と同じように、表の下部に1日単位の資金繰り表をつければ、お金の流れが見えるのでさらによくなるでしょう。


⑧ 資金繰り表の策定及び運用

これは先に書いたとおり、日次資金繰り表と月次資金繰り表を策定します。資金繰り表は単独で策定するのでも構いませんが、できれば、売上高や費用の下に同じ時系列で並べた方が経営判断がしやすいです。これらは経理に任せたままにしないで、必ず経営トップは毎日目を通すか、日次資金繰り表なら、自分で記入するのをお薦めします。 留意事項は、日次決算ではあまり数字をこまかくしないことです。千円単位で十分です。


⑨ 経営トップのお客様訪問

10種の経営手法の中で最も重要な手法ですし、ほとんどの企業が実施していないものでもあります。お客様への表敬訪問を経営トップ自らが行うことです。訪問は社員を連れずにアポなしで単独で行くことですね。Aランク顧客(売上高上位10社など)を中心に定期的、かつ計画的に訪問をしてください。訪問したら、お客様の要望やクレームを真摯にお聞きするのです。そして、市場ニーズの変化、ライバルの動向などもつかむようにするとよいです。また、つかんだ情報は社内で社員と共有してください。この経営トップのお客様訪問は後ほどまた触れます(古賀注:他のところでお客様のことを「顧客」という表現を使っているが、論理的な説明の場合に「顧客」を使っているだけで他意はない)。


⑩ ランチェスター戦略(弱者の戦略)

ランチェスター戦略の「弱者の戦略」です。もしかしたら、戦略的な経営手法の中で、中小企業が”実践で使える手法”はランチェスター戦略だけではないでしょうか。今ではメジャーな経営手法なので、知らない企業の方が少ないと思いますが、万が一ランチェスター戦略を知らないということであれば、ものすごく大きな損失だと思います。

ランチェスター戦略では、占有率が一位でない企業は全て「弱者の戦略」を取ります。「弱者の戦略」とは、差別化戦略(セグメント思考)です。自社が勝てる範囲まで、地域、商圏を狭めます。そして、製品やサービスの差別化を図るのです。「誰もが欲しがらないもの」がキーワードですね。

なお、ランチェスター戦略については、一倉定氏も活用していたし、現在でも様々な方が本を書いています。しかしながら、元は田岡信夫氏がランチェスター戦略を体系化されていて、他の方はそれを現代的に書かれているだけです(古賀注:参考にならないという意味ではない)。田岡信夫氏の著書に体系は書きつくされているので、ランチェスター戦略を学びたい方は、田岡信夫氏の著書を読んでいただくとよいのではないでしょうか。ドラッカー教授と同じで、時代背景の古い描写があっても、体系や内容は古さを全く感じない名著ばかりだと思います。

以上、簡単に「倒産を防ぐ経営手法」を10種挙げました。

①から⑤は、支出を防ぐことに主眼を置いています。資金繰りが苦しい企業は早急に取り組むべき項目です。

⑥から⑦は経営トップの計数管理に主眼がありまる。倒産する企業の経営トップは数字に弱い人が多いです。計数管理ができるようになるために最低必要な数表を挙げておきました。

⑨と⑩は販売強化やマーケティング戦略の核になります。

経営トップが知るべき知識を「支出を防ぐ」「計数管理」「マーケティング」の三分類でまとめましたが、知らない知識があれば、自分で調べるか、知っている人に聴いて理解をしてください。自分自身でその手法を完全に使いこなすことができなくても、社員にやらせて、自分は管理していく方法も取れます。

こういう手法は知らないと思いつかないし、指示もできません。その企業特有の課題や問題に対し、知っておくべき経営知識は最低10種はあると思うので、知らないものは一つずつ学んでいただくと良いです。
 
    全企業のトップが知っておかなければならない知識とは
  
 その企業特有の問題に対する経営知識を説明しました。

では、全企業の経営トップが知っておかなければならない経営知識とは何でしょうか。

一言でいうと、「マネジメント」なのですが、それを分解すると4つのマネジメントの機能になります。
 
1.マーケティング
2.イノベーション
3.人を活かす人事管理
4.管理会計



これらについては、たくさんの方が研究し説明をしているので、ここで詳細な説明は行いません。ご存知でない方は各自で学んでいただければといいと思いますが、ポイントだけを述べておきます。

1.マーケティングは、単にセールスプロモーションや市場調査をするということではありません。ドラッカー教授の言葉を借りれば「顧客は何を買いたいか」を明らかにし、それを提供する活動です。また、その活動のために企業の人・もの・金・情報などの経営資源をどのように使うかを考える機能でもあります。

2.イノベーション顧客に新しい満足を提供する機能ですし、新しい顧客を創造する機能でもあります。ドラッカー教授はイノベーションの機会を”意図的に”見つけるために、体系的な7つの機会を提唱していました。特に1つ目の「予期していなかった成功と失敗」は分かりやすいものなので、絶対に使うべきものです。

また、顧客の要求は変わっていくものであり、新たな競合会社が参入して市場環境は変化します。イノベーションはマーケティングだけではなく、社内に対しても使われます。市場環境の変化に応じて事業構造を改革する機能もイノベーションです。

3.人を活かす人事管理とは、人間関係を良好にし、組織全体の生産性を高めるマネジメントであす。そのためには、人間性や人の心への深い洞察と学習が求められます。 ここについては、いつか論述したいと思っています。


4.管理会計は、経営の意思決定に役立つための会計です。
予算実績管理やキャッシュフロー経営や損益分岐点などは知っておくべき内容です。経営者は会計を勉強すべきだという意見もありますが、決して仕訳や税務申告ができるようになる勉強ではありません。減価償却費には実際の現金支出が伴わないことや、先に述べた限界利益や変動費、固定費の違いや、会社の利益がそのまま現金残高にならないことも当然知っておくべきことがらです。

会計には絶対に知っておくべきことがあるので、経理担当や税理士に聴いておくといいですね。また、少し専門的ですが賃率や増分(ましぶん)や直接原価計算などは知っておいた方がよりよいでしょう。

「経営者の知識の問題」として、知っておくべきことを、「縁起の理法」、「その企業特有の経営課題に対する手法」、「マネジメントの4つの機能」と説明をしてきました。

最後の一つは「悪に対する知見」です。
 
「悪に対する知見」とは「人がどのようなシチュエーションになると悪いことをする可能性がある」というような人が罪を犯すのを未然に防ぐための知識です。

あるいは、悪いことを考える人間は、どのような方法で悪事を働くかを知っておくことです。 人間は本来素晴らしいものですが、人間には「自己保存の欲と自由意志」があるために、シチュエーションによっては悪をなすこともあるのですね。

たとえば、他の誰にも監視されていない状況で、お金の出し入れを任されると横領してしまうことがあります。急に成功したとき、大金が入ったときなども危険です。
「お人好し」のところで述べましたが、連帯保証人になり、債務者が借金して逃げて債務を全部払うことになり、会社を倒産させたり、財産を失ったりした社長もいます。これなども連帯保証人になることのリスクを知らなかったという面だけではなく、相手の人物の「弱い部分」を見抜けていなかった面も大きいです。

あるいは、取引先で、最初は小さな取引だったが、だんだん取引が大きくなり、おかしいなと思いつつも支払があるので信用して製品を納めていました。するとある日巨額な取引を言ってきて全部の製品を納めたら、”とんずら”していたというケースもあります。

詐欺は向こうも騙そうとして考えて工夫しているので、それを完璧に防ぐのは難しいかもしれないです。ただ、こちら側もスキを見せていなければ、詐欺をするような人物が近づいてきにくいというのはあるでしょう。

スキの無い状況はどうやって作るかというと、悪に対しての知見を持っていることが第一だし、日常の業務や物事に対処するときに複数の人間で当たるということです。一人を騙せても、二人、三人を騙すのは難しくなるからです。販売についても、仕入れについても、一人しか分からないような状況ではなく、常に何人かが関わるようなシステムにしておくといいです。

それから、八正道の正思惟において過ぎた欲望を持っていないかの反省を述べましたが、過ぎた欲望や執着を持っている人間は騙されやすいです。

正思惟によって心を見つめる習慣があれば、心にスキがない状況となると思います。悪が近づいてこないようにするためにも反省修法は有効な方法なのです。 
 
 
経営トップの知識の問題を述べてきたが、ここで簡単にまとめてみる。

経営の問題の核

2.経営トップの知識

解決方法=四種の知識を得ること

(1) 縁起の理法

(2) その企業特有の経営課題を解決する手法(10以上)

(3) どの企業も知っておかなければならないマネジメントの機能
  ① マーケティング   
  ② イノベーション
  ③ 人を活かす人事管理
  ④ 管理会計

(4) 悪に対する知見
    知識を経済的な価値に転換するには
 
 ここまでで、経営の問題の核を、「経営トップの心」と、「経営トップの知識」と体系化し、それぞれの具体的な対処方法を論じてきました。

本論は、「経営成功法」です。経営の問題を防ぐ段階の話だけをしようとしているわけではありません。問題を防ぐ方法を、更にプラスに転じれば、それは経営を成功させていく方法になります。

経営の問題の核は、すなわち経営成功の核と同じなのです。「経営トップの心」と、「経営トップの知識」は経営成功の核です。本論で述べた方法は、そのまま成功の核になるのです。

しかしながら、成功するためには、知識をどのように経済的な価値に転換するかが最大の課題になります。成果を上げるためには「行動」が必要になるのです
 
経済的な成果は、「心と知識と行動」の掛け算によって決まります。
 
では、行動とはどういったものになるのでしょうか?


経済的な価値を生む行動の第一「顧客の声を聴くこと」です。 「社長のお客様訪問」です。お客様は我社の何を気に入って商品やサービスを購入してくれているのかを聴いてください。そして、どのようなことに不満も持たれているかを聴いてください。

行動の第二「非顧客の声を聴くこと」と、「顧客の顧客が求めているものを知ること」です。 非顧客とは、我社の顧客になってもおかしくない人ですが、顧客になっていない人のことです。なぜその人たちは我社の商品やサービスを購入しないのかを知るのです。

顧客の顧客とは、たとえば貴社が電気製品の部品を作っているメーカーだとします。すると、直接のお客様は、部品を集めて組み立てるセットメーカーになりますが、セットメーカーは一般消費者に電気製品を売っています。この一般消費者が顧客の顧客になります(流通の会社が顧客という視点もあります)。単に顧客の意向を知るだけではなく、顧客の先にいる顧客の意向を知ることが事業のヒントになることがあるので、顧客の顧客が求めているものを探究することは大切です。

顧客、非顧客、顧客の顧客と三種類のヒアリング対象を挙げましたが、顧客の声を聴くというのは、市場の変化を知ることになります。

顧客の要求は絶えず変化します。それゆえ、事業構造も顧客の要求に応じて変化していかなければなりません。正しく事業構造を変化させるためには、顧客のニーズを正しくつかむ必要があります。 ニーズを知るには顧客に直接聴き、見てくることが一番なのです。社長は社長室にいて、指示をするだけではなく、直接お客様のところへ出向くことです。それが市場のニーズを知る最も良い方法なのです。


行動の第三は「小さく始めて、ダメだったら撤退すること」です。 「これは売れる!」と思った商品やサービスでも、世の中のニーズにタイミング合っていない場合は売れません。競合もいるし、顧客の要求も変化します。

それゆえ、新規の事業を始める場合は、できるだけ投資を抑えて、小さくスタートすることです。大きな投資で1つを始めるよりは、小さな投資で複数の案件を始めてダメだったら撤退し、いけそうだったら投資を増やして攻勢をかけるようにするといいでしょう。失敗したら、やり方を変えるのです。経営は答えのない問題に答えを出すというところがあります。ある程度考えたら、実際にやってみて、うまくいかなければ別の方法を取る、これの繰り返しが事業経営ですね。


行動の第四は、生産性に注力した行動です。言葉を代えれば、時間に注目した行動です。 ドラッカー教授は「成果を上げる者は仕事からスタートしない。時間から出発する」と説いていました(『[新訳]経営者の条件』、東京、ダイヤモンド社、1995年)。時間管理の重要性を説いていたのですね。

生産性を見るには、まず「時間当たり利益」を出します。この場合の利益は、限界利益(売上高-変動費)から、人件費以外の固定費引いたものです。この利益を総労働時間で割ることによって、「時間当たり利益」が出ます。

時間当たり利益=(限界利益-人件費以外の固定費)÷総労働時間


次に「時間当たりの人件費」を出します。これは人件費を総労働時間で割るのです。

時間当たり人件費=人件費÷総労働時間

この二つを比べてみると 時間当たり利益<時間当たり人件費 になっていたら、赤字だということです。 「時間当たり利益」が「時間当たり人件費」を上回らなければならないのですね。 そして、この二つの実数を入れてみて、社員に見せてください。そして考えさせるのです。 1時間当たりに自分たちがもらう給料よりも、1時間当たりの利益を出さなければ会社は成り立たないし、自分たちの給料も上がらないことを知ってもらうのです。

次に時間当たり利益を増やすにはどうすればよいかを考えさせます。

具体的には、売上高を増やすか、変動費を減らすか、固定費を減らすか、総労働時間を減らすしかありません。最も効果が上がりやすいのは総労働時間でしょう。時間の観点から、総労働時間をいかに減らすかを全社員で改善するのです。残業を減らすことも一つだし、効率を上げること、無駄な作業や会議を無くすことも大事になってきます。

時間効率を上げる方法として、「時間の記録」があります。1日の仕事内容を10分単位で全社員に記録させて、時間の使い方について本人に振り返らせ、コメントを記入させてください。それを上司に報告して、上司がチェックしコメントを入れ、その上の役員又は社長に報告をあげます。この時間の記録をさせると、社員の姿勢が変わってきます。もっと効率のよい方法がないかとか、この業務はやる必要があるのかなどを考えるようになります。

こうした社員が自分たちで考えて行動する組織は、「学習する組織」になっていきます。

 
行動の第五は「学習する組織」です。

「学習する組織」とは何かというと、二つの面から説明できます。 一つは、社員自らが学習するという面。もう一つは、経営者、経営幹部が社員を教育するという面です。

まず、社員自らが学習するというのは、先に述べた日々の業務を工夫するということや、改善するということがあたります。また、常に知識を吸収しようと努力することでもあります。現代は知識社会であり、知識は将来に向けて広がっていくので、常に学習をしないと組織の発展が止まってしまうのです。

経営者と社員の知識の質と量が会社の発展、繫栄に大きく影響するので、社員が自主的に学習するような組織であることが望ましいのです。
 
しかし、社員が自主的に学習するような組織は理想ですが、社員を放っておいても、そのようには普通はならないでしょう。そこで、先に触れたように、生産性の数字を見せるような工夫をして、経営者は社員が学習をするような仕組み作りをしなければならないのです。

仕組み作りのコツは、学習をすることによって、自分自身が向上していることを実感できるようにしてあげることです。自分の人間力が上がったり、認識力が高くなったり、仕事能力が上がったりすると、学習が楽しくなるし、更に勉強しようと思うものです。そして仕事の成果も上がるので、また楽しくなって、学びを続けるのです。経営者や上司は、社員が学んだことを評価してあげて、褒めることも大切です。努力をしていることを見てあげて、褒めてあげることも大事な上司の仕事なのです。

こうした一連の流れで「学習する組織」をつくってください。

さて、知識を経済的価値に転換する「行動」に関して述べてきたが、まとめると次のようになります。

3.行動

(1) 顧客の声を聴く 
(2) 非顧客、顧客の顧客の声も聴く
(3) 小さく始めて、ダメだったら撤退する
(4) 生産性に注力した行動
(5) 学習する組織

誤解はないと思いますが、行動はこの5つだけでよいという意味ではありません。この5つの行動は、知識を経済的な価値に転換するための行動の核になるものであり、これらを起点にし、マーケティングやイノベーションのような「マネジメントの機能」や、その他の経営手法を実践してください。あくまで起点として使っていただいて、それ以外の行動も実践してくださいね。

以上で仏教的経営成功法の要素が出そろいました。
    段階論による「まとめ」と成果を出す方程式
 
まとめとして、「仏教的経営成功法」を段階論で説明をしてみます。

仏教的経営成功法では、第一段階として、経営者の自己変革(セルフマネジメント)を説きます。

それは経営者が、自らの心の問題と知識の不足に真剣に取り組むことです。どのように心に取り組めばいいかというと、心の四毒(貪・慢・瞋・癡)がないかを点検し、正見、正思惟、正語の反省をすることです。そして思いを利他に代えて、利他を実践します。
 
獲得する知識については、縁起の理法、4つのマネジメント機能(マーケティング、イノベーション、人を活かす人事管理、管理会計)、悪の知見がありますが、その企業特有の経営課題を解決する経営手法も学ぶ必要があります。 こうした自己変革の取り組みによって、経営者の認識力や人間力は間違いなく向上します。

経営の成否は経営者がほとんど握っているため、経営者の絶えざる自己変革が最重要であると言って過言ではありません。

そして、経営トップの自己変革は、経営トップ個人の成長に繋がり、認識力の向上は個人の成功に繋がっていきます。経営トップはその成功体験を自分だけに留めておくのではなく、会社組織に広げていかなければならない立場にいます。

仏教思想に「自利利他」(じりりた)という言葉があります。自利利他は、一般的な解釈では、「利他の実践がそのまま自分の幸せなのだ」というものです。

しかし、私は「自利」を先に考えて、「自らの仏道修行によって得た功徳を自分が受けるとともに、他の人にも功徳を与えること」と解釈しています。現代的な言葉に代えると、「自分の向上を、他の人の幸福につなげる」というものです。自分だけが良くなればいいというのではなく、「自分が成長して幸せになったら、それを他の人の幸せに広げていく」のです。経営者の場合だったら、個人の成功や幸福を、組織(従業員)の成功や幸福に広げていくことです。

ここでのポイントは自利が先であって、まず経営者が心を正し、知識を学んで、それを他の人へ広げていくということです。セルフマネジメント(自利)から、組織のマネジメント(利他)への流れです。

ただし、留意していただきたいのは、自己変革、セルフマネジメントが完全に終わってから、組織のマネジメントをするという意味ではないということです。

人生の課題は成長に応じて次から次へと出てくるものなので、自己変革は一生続き、自分づくりが完成するときはないのです。だからといって、「自分は完璧だ」と思うまで何もしないということではありません。自分づくりが完成していなくても、その時点での最高の自己は差し出せるものです。その時点での最高の自己を差し出しながら、他の人を幸せにすることを考えるということです。

このように、第二段階は、「自利利他」の精神の表れとして、個(経営者)の人間力の向上(成功)から、組織(社員)の成功(幸福)へとつなげていく段階です。組織を構成する者の「心」、「知識」、「行動」を掛け合わせて最大成果を挙げることです(心を正し、学習を続けて、行動すること)。

自利利他の精神は当然のことながら、社内、社員だけではなく、お客様に広がっていき、地域から日本へ、日本から世界へと広がっていくことになります。

これは、近江商人の「三方良し」の精神と同じです(「三方良し」とは、「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三方が良いということ。売り手も買い手も満足して幸せで、社会貢献もできているのが良い商売だということ)。社員が幸福になるだけではなく、お客様も幸福になり、社会も繁栄して幸福になる姿です。

そして、この流れで必要になるのが、知識を経済的な価値に転換する行動です。心を高めて博識な知識を得ても、行動しなければ成果は上がりません。心を磨き、正しい知識を得た人が行動することによって繁栄していくのです。

成果には、「心と知識と行動」の三つが関係します。心と知識を掛け合わせたものに、行動を掛け合わせることで、成果が上がってきます。

心とは、どういった精神で仕事をするのかといった「心の方向性、心の強さ広さ、精神性の高さ」です。

知識とは、「どういった知識を持っているか、知識の質と量はあるのか、あるいはその知識を使いこなせているか」といったことです。

行動とは、「実践であり、実際に動くこと」です。行動の実例は、起点となる5つの行動と、4つのマネジメント機能や、その企業に必要な経営手法、人を活かす人事管理や管理会計 です。


これら三つの要素を掛け合わせることによって具体的な成果が上がってきます。そして、組織の成果は、そこに所属する人全員の「心のレベル」と「知識のレベル」と「行動のレベル」の掛け算によって規定されのです。


成果の方程式

成果(Results) = 心(Mind)×知識(Knowledge)×行動(Action)

R=MKA
注目していただきたいのは、方程式が掛け算だということです。知識は減らないのでゼロは基本的にはありません。しかし、行動はゼロということはあり得ます。その場合、他の要素があっても成果はゼロです。

あるいは、心がマイナス(悪意など)になっているときには、他がプラスであっても結果はマイナスになります。また、心がマイナスで、知識も悪い知識(マイナス)であったら、行動も悪い行動でマイナスになるので、結果はマイナスとなります。

方程式は一見”言葉の遊び”風ではあるが、マイナスの心を持つことのリスクを知っていただきたいことと、それぞれの要素を高めることによって、相乗効果で成果が上がることを理解していただければよいと思います。
 
 
段階論によって仏教的経営成功法を説明しました。これをまとめとし、本論考の説明は終了とさせていただきます。

仏教に「抜苦与楽」(ばっくよらく)という言葉があります。「苦しみを取り除き、幸福にする」という意味です。 経営がうまくいけば、消えていく闇や不幸は多いのです。 この世には光を求めている人がたくさんいます。 
 
仏教的経営成功法が、世の光となることを願っていますし、そうなるように行動していく所存です。  
 
主旨に賛同していただける方の御協力をお願いしたいと思っています。
 
 
<おわり>
 
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           古賀光昭です
 
千葉県柏市在住、社長のビジョン実現化の支援をする社外No.2型の経営コンサルタント。経営計画書の策定や夫婦経営のアドバイスも得意としている。
 
「仏教思想」とドラッカー経営理論を融合させて体系化した「仏教的トップマネジメント」を編み出した。また、経営成功法としての体系化した「仏教的経営成功法」を考案している。

仏教的シリーズを作成しているが、本人は僧侶ではなく、特定の宗派を代表しているのでもなく、ごく普通の民間人(笑)。
 
昭和37年福岡県大牟田市生まれの56歳、妻と1男1女で千葉県柏市に住む。でも兵庫県明石市や大阪府豊中市で育ったので、熱くてオモロイ阪神タイガースファンの関西人(笑)。
 
上智大学 大学院 博士前期課程 英米文学専攻修了  文学修士(Master of Letters   専門は英語学。指導教授は、渡部昇一先生)

大手航空写真測量会社、上場硝子メーカー、上場IT企業等の総務人事・経営企画等のマネジメント職を経て、2009年6月に独立。
 
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(こちらのブログは以前はペンネーム、古賀光明や孔明を使用していました)