倒産からの学び
 

経営者は他の会社の成功事例だけではなく、失敗事例も参考にされているでしょう。

どんな理由で、ある会社が倒産したのかを学ぶことは、自分への戒め、反省の材料にもなります。
 
ここでは、一般に公開されている事例からお話をしたいと思います。

今回の学びは、民事再生法の適用を申請したワイキューブです。


下記の本を参考にしました。
私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日私、社長ではなくなりました。 ― ワイキューブとの7435日 (2012/02/28) 安田 佳生(やすだ よしお)
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私は経営の核として次の2つを最重要視しています。

「顧客第一主義」
「資金重点主義」です。

簡単に説明しますと、お客様の意向を第一考え、徹底したお客様サービスをすることと、
資金ショートをしないように「資金の入りと出」を管理して経営をすることです。

そして、内部管理については、お客様の要望を達成するために内部を整えるのが正解なのですが、社長は人事と財務からは決して目を離してはいけません。


また小規模な企業で夫婦で経営をされている会社は、夫婦円満が大切だと言うことです。

まとめますと

1. 経営の核は「顧客第一主義」と「資金重点主義」

2. 社長は内部については人事と財務から目を離してはいけない。

3. 夫婦円満が繁栄のもと。


これらの基本は今後の倒産の考察で関連して出てきますので、覚えておいてもらうといいですね。


さて、ワイキューブの安田佳生さん、本の最初の方で次のように書かれています。

「他人の決めたルールは価値観に沿って生きることに意味を見いだせない性格は、基本的には変わっていない。」


社会、会社又は法人というのはルールだらけですからね。

税務申告のルールから、労働基準法、会社法とか、他人が作った嫌になるくらいたくさんのルールの中で経営をしていかければならないのが社長です。

こうした考え方をしていたこと自体が社長に向いていませんよね。

ただし、創業型の社長には、こうした方もいらっしゃると思うんですけど、そういう場合には社長へ直言してくれる参謀のような片腕役員か、厳しく指導してくれる顧問を持たないと、まず経営はできないでしょうね。


では、具体的に考察していきましょう。
 
ワイキューブの倒産の原因は色々とありますけど、表面的に見えるものとして、私は大きく二点にまとめてみました。

一つは、社長の安田さんが、お客様ではなく、社員に目を向けていたこと。

もう一つは、キャッシュ・フロー、資金繰りを全く考えていなかったこと。



この二点です。

安田佳生社長は、優秀な人材を集めることを第一に優先して経営をしていたようです。

そのため、ニ点目の「資金繰りを全く考えていなかった」と関連しますが、資金を考えずに様々な出費をしています。

社内にカフェーを作り、専属のバーテンダーを雇っています。

また、ワインセラーを作ったり、ゴージャスな応接室を5つも作ったりしています。


あるいは、安田佳生社長は、優秀な学生を集めるために人気企業ランキングのトップに立つことを本気で目指し、そのための採用費用に3億円も使ったそうです。

これらの出費は、お客様からしたら全く関係のない出費です。お客様サービスにならない出費ですね。

企業はお客様に喜んでいただいて、お金をいただきます。

社員の福利厚生にいくらお金を使っても、お客様の満足を得ることはできません。


社員の福利厚生は必要ですが、それは徹底したお客様サービスをして得た利益の一部を還元するのが正しい考えた方だと私は思っています。

いくら社員の福利厚生をよくしても、会社が倒産していしまえば、元も子もない
からです。

向いている方角がお客様ではなく、社員だったのですね。

そして採用活動に全社員を動員するあまり、売上も減ったそうです。



また、その他の大きな出費として高層ビルにオフィスを構えてしまうんですね。

そこの家賃は月1千二百万円で、払っていける額ではなかったそうです。

安田社長は財務は副社長に任せっきりで、全く見ていなかったとか。


「利益を残すことにも全く興味がなかった」
し、「利益を出すということの本質を理解していなかった」(本人談)そうです。

それゆえ、営業利益を全て使って社員旅行に行ったり、借金をして社員の給料を上げたりしています。

給料を社員の希望よりも上げたり、福利厚生をとんでもなく充実すれば、優秀な人材を集めることができると思ってやったのでしょうが、資金があるかどうかを考えることがなかったため、借金が増えることになってしまいました。


ま、これらは表面的に起きたこと、実行してしまったことなのですが、こうしたことを起こす元には、社長の内面の心があります。
 

表面的には資金繰りを考えずに社員及び新規採用のためにお金を使ったこと、お客様の視点が無かったことなどがあげられます。

しかし、そうした安田佳生社長の行動は何から生まれているのかが重要だと思います。

安田社長の気持ちを知るヒントが本には書いてありました。

安田社長は正直に自分の気持を書いておられます。


「私はビジネスで成功したかったというよりも、立派な受付のある会社の社長になりたかっただけなおかもしれなかった。
大きなビルや立派な受付に対する劣等感を克服することが、私にとっての目的になっていた。」


安田社長は、高層ビルに入っている会社へ営業へ行くたびに、雑居ビルに入っている自分の会社(ワイキューブ)が負けている気がしていたそうです。

そして、おしゃれな受付のある会社に行くたびに、自分の会社に引け目を感じていたとか。 

安田社長は、「そういう劣等感を、そのままにしておくことができなかった」(本人談)ということですね。

安田社長は劣等感の傷を癒すために社長をやっていたのですね。 


ワイキューブのお金の使い方は独特でした。ワインセラーなどは他の会社ではあまりみないでしょう。

しかし、社長の心の奥に残ってしまった劣等感が、経営のどこかに影響を与えていることは、多くの会社に見られることだろうと思います。

その劣等感を覆い隠そうとする方法が、安田社長は「高層ビルと受付」や「ただ優秀な社員を採用して、彼ら彼女らに嫌われたくない」というものになりましたが、他の会社ではどうでしょうか?


工場で勤務していることが劣等感になって、やたらと新しいものを取り入れようとしたり、社長室を立派にしようとしている社長。


昔で言う3Kの事業が嫌なので、経営の多角化といってIT系など苦手な分野に無理して進出しようとしている社長。

若い頃とても貧しい経験をしたために、今はお金を持っていることを人に知ってもらいたいために本社ビルを建てたり、高級な車に乗る社長。

自分は異性から好かれなかったから、綺麗な女子社員を秘書として周りに配置したがる社長。

色々ありますね。 人間ですから、色々ありますよ。



行動は様々ですけど、その元になっているのは、若い頃に作った劣等感というのが往々にしてあります。

 
この社長の劣等感を上手に成仏させないと、経営に悪い影響を与えてしまうのです。

これから事業を始めて社長になろうという方も同じです。

劣等感をバネにして、良い方向へ事業を進められれば言うことはありませんが、屈折した劣等感は経営の意思決定を誤ってしまいます。


自分が何か極端な考え方や発想をしている
と感じたら、その底に劣等感がないかを見るようにしてください。

そしてもし、劣等感を見つけたら、自分自身を認めてあげてください。


「マイナスの部分もあったけど、よく頑張ってきたじゃないか。」と、自分自身を認めてあげてください。

「他の人より劣るところもあったけど、私も掛け替えの無い個性なんじゃないか。」と。


「過去に評価されなかったこともあったかもしれないけど、
これからは評価をもらうことを期待するのではなく、
人に喜びを与える側に立つ生き方もあるんじゃないか。」
と。


どうか、心のなかにある劣等感を助けてあげてください。

きっと良い方向へ流れが変わると思います。

    
      
  
           古賀光昭です
 
千葉県柏市在住、社長のビジョン実現化の支援をする社外No.2型の経営コンサルタント。経営計画書の策定や夫婦経営のアドバイスも得意としている。
 
「仏教思想」とドラッカー経営理論を融合させて体系化した「仏教的トップマネジメント」を編み出した。また、経営成功法としての体系化した「仏教的経営成功法」を考案している。

仏教的シリーズを作成しているが、本人は僧侶ではなく、特定の宗派を代表しているのでもなく、ごく普通の民間人(笑)。
 
昭和37年福岡県大牟田市生まれの56歳、妻と1男1女で千葉県柏市に住む。でも兵庫県明石市や大阪府豊中市で育ったので、熱くてオモロイ阪神タイガースファンの関西人(笑)。
 
上智大学 大学院 博士前期課程 英米文学専攻修了  文学修士(Master of Letters   専門は英語学。指導教授は、渡部昇一先生)

大手航空写真測量会社、上場硝子メーカー、上場IT企業等の総務人事・経営企画等のマネジメント職を経て、2009年6月に独立。
 
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